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SaaS型ERPとは?オンプレミスとの違いやメリット、2層ERP戦略と主要製品

SaaS型ERPの基礎知識から、オンプレミスとの違い、導入メリット、主要製品(SAP、NetSuite、freee等)の比較まで網羅的に解説。大企業で採用が進む「2層ERP」戦略や失敗しない選び方のポイントなど、クラウドERP導入を検討中の担当者が知っておくべき情報を専門家が詳しくまとめました。

目次

  1. SaaS型ERPとは?
  2. SaaS型ERPとオンプレミス型の比較
  3. SaaS型ERPを導入するメリット
  4. SaaS型ERPのデメリットと注意点
  5. 大企業の新常識「2層ERP(Two-Tier ERP)」戦略
  6. 主要なSaaS型ERP製品比較【外資系・グローバル】
  7. 主要なSaaS型ERP製品比較【国産・中堅中小】
  8. 失敗しないSaaS型ERPの選び方
  9. まとめ

企業の競争力を左右するIT基盤において、今や「SaaS型ERP」は避けて通れない選択肢となりました。かつては大企業が多額の資金を投じて自社専用のサーバーに構築していたERP(基幹業務システム)も、現在はインターネット経由で月額利用するクラウド形態が主流となっています。しかし、従来のオンプレミス型と比較して、具体的にどのような違いがあり、自社にとってどちらが最適なのかを判断するのは容易ではありません。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、システムの柔軟性や導入スピードはビジネスの成否に直結します。SaaS型ERPは、法改正への自動対応やリモートワークの推進といった現代の課題に対して、極めて有効な解決策を提示します。一方で、カスタマイズの制限やデータ連携の課題など、導入前に把握しておくべき注意点も存在します。

本記事では、SaaS型ERPの定義から、主要製品の比較、さらには本社と子会社で異なるシステムを使い分ける「2層ERP」戦略まで詳しく解説します。

SaaS型ERPとは?

SaaS型ERPとは、ベンダーがクラウド環境で稼働させているERPソフトウェアを、インターネットを通じてサービスとして利用する提供形態を指します。ユーザー企業は自社で物理的なサーバーを保有したり、ソフトウェアのインストール作業を行ったりする必要がなく、IDを発行するだけで即座に基幹業務を開始できるのが特徴です。

従来のシステム構築では、ハードウェアの選定からネットワークの設定まで多大な工程を要していましたが、SaaS型はこのプロセスを大幅に簡略化しました。現代のビジネス環境において、ITインフラにリソースを割かずに「本来の業務」に注力するための有力な手段となっています。SaaS型ERPの基本的な理解を深めるために、まずは以下の3つの観点から概要を整理しましょう。

クラウドERPの分類(SaaS vs IaaS/PaaS)

常に「最新」が提供されるマルチテナント方式

サブスクリプションモデルによるコスト構造の変化

クラウドERPの分類(SaaS vs IaaS/PaaS)

クラウドERPと一口に言っても、その実態は大きく分けて2つの形態に分類されます。一つは、AWSやAzureといったクラウド上の仮想サーバーに、自社専用のERPパッケージをインストールするIaaS/PaaS型(プライベートクラウド)です。もう一つが、本記事の主題であるSaaS型(パブリッククラウド)であり、これらは運用思想が根本から異なります。

IaaS型は、場所がクラウドになっただけであり、OSの管理やソフトウェアのアップデート作業は依然としてユーザー企業側に残ります。対してSaaS型は、アプリケーションのコードからインフラまで全てベンダーが管理するため、ユーザーは純粋に機能を利用するだけで済みます。

最も運用の手間を減らし、クラウドのメリットを最大限に享受したいのであれば、SaaS型の選択が第一候補となるでしょう。

常に「最新」が提供されるマルチテナント方式

SaaS型ERPの多くは「マルチテナント方式」という仕組みを採用しています。これは、一つの巨大なシステム基盤を複数の企業(テナント)で共有して利用する形態を指します。マンションの各部屋に住人が入るように、システムそのものは共通でありながら、データは企業ごとに厳格に分離されている状態です。

この方式の最大の利点は、ベンダーがシステムをアップデートすると、全てのユーザー企業に最新機能が即座に反映されることです。オンプレミス時代に数年おきに行われていた数千万円規模の「バージョンアッププロジェクト」は不要となり、常に法改正に対応した最新のシステムを使い続けられます。

常に進化を続けるシステムを定額で利用できる点は、変化の激しい現代の経営において、競合他社に遅れを取らないための大きなアドバンテージとなります。

サブスクリプションモデルによるコスト構造の変化

SaaS型ERPの導入は、企業の財務戦略にも大きな変化をもたらします。これまでのERP導入は、初期費用として多額のライセンス費用やサーバー購入費用を支払う「資産購入(CAPEX)」モデルが一般的でした。しかし、SaaS型は初期費用を極めて安価に抑え、月額または年額の利用料を支払う「経費支出(OPEX)」モデルへと移行します。

これにより、多額のキャッシュアウトを抑えながら、使った分だけ支払う柔軟な予算管理が可能になります。数千万円の投資承認を得るための長い社内調整を経ることなく、小規模な部門や子会社からスモールスタートできる点もSaaSならではの魅力です。

また、利用人数の増減に合わせてコストを最適化できるため、組織の拡大や縮小にも柔軟に対応でき、無駄なITコストの発生を防ぐことができます。

SaaS型ERPとオンプレミス型の比較

SaaS型ERPとオンプレミス型を比較する際、単純な優劣で語ることはできません。両者は、システムの管理権限をどこに置くかという思想の違いに基づいているからです。オンプレミスは「自由度」と引き換えに「重い運用」を、SaaSは「標準化」と引き換えに「身軽な運用」を提供します。

企業のIT人材の有無や、業界特有の業務プロセスの有無によって、どちらが適しているかは明確に分かれます。選定の軸となる主要な3つの比較ポイントを詳しく見ていきましょう。

保守・運用の手離れ(ベンダー責任)

導入スピードと拡張性

カスタマイズ性とFit to Standard

保守・運用の手離れ(ベンダー責任)

オンプレミス型では、深夜のサーバー障害対応やバックアップの管理、定期的なセキュリティパッチの適用など、システムを維持するための膨大な「見えないコスト」が職員の負担となっていました。SaaS型ERPを選択した場合、これらの保守・運用業務はすべてベンダー側の責任範囲となります。

情報システム部門は、サーバーの物理的な管理から完全に解放され、より戦略的なDX推進やビジネス課題の解決に専念できるようになります。IT人材が不足している中小企業や、エンジニアをコア業務に集中させたい成長企業にとって、運用の手離れの良さは決定的な選定要因です。

万が一の不具合や脆弱性発見時も、ベンダー側で一括対応が行われるため、セキュリティレベルを常に一定以上に保てる安心感があります。

導入スピードと拡張性

SaaS型ERPの導入スピードは、オンプレミス型とは比較になりません。サーバーの調達やデータセンターの契約といった物理的な工程が一切不要なため、契約したその日から環境にログインして初期設定を開始できます。オンプレミスでは半年〜1年以上かかっていた立ち上げも、SaaSなら数ヶ月で本番稼働に漕ぎ着けることが可能です。

拡張性の面でも、SaaSは非常に優秀な特性を持っています。例えば、新しい拠点を立ち上げた際や従業員が急増した際も、ライセンスを追加するだけで即座にシステム利用範囲を広げられます。ビジネスの成長スピードにシステムが追いつかないというリスクを回避し、常に最適な規模で運用を続けられる点はクラウドの大きな強みです。

逆に、事業の縮小時にはライセンスを減らしてコストを下げることも容易であり、サンクコスト(埋没費用)を作りにくい構造になっています。

カスタマイズ性とFit to Standard

この項目こそが、SaaS型ERP導入における最大の分岐点です。オンプレミス型は「スクラッチ開発」のように業務に合わせてプログラムを書き換えることができますが、SaaS型は複数の企業でコードを共有しているため、個別のプログラム改変(アドオン)は原則として行えません。

そのため、SaaS導入では「システムに合わせて業務を変える」というFit to Standardの考え方が必須となります。「うちは独自業務が多いから」とカスタマイズにこだわると、SaaSのメリットである自動アップデートの恩恵を受けられなくなり、導入は失敗に終わります。

世界標準の業務フローを採用することで、自社の非効率なプロセスを洗い出し、グローバル水準の業務品質へ引き上げるチャンスと捉える姿勢が重要です。

SaaS型ERPを導入するメリット

SaaS型ERPを導入することで得られるメリットは、単なるコスト削減や運用負荷の軽減にとどまりません。ビジネス環境の変化に対してシステムが即座に適応し、企業の成長を阻害しない「しなやかさ」を手に入れられることが真の価値です。

現代の経営課題を解決するためにSaaSが果たす具体的な役割として、以下の3つのメリットが挙げられます。

頻繁な法改正への自動対応(インボイス等)

リモートワークとマルチデバイス対応

強固なセキュリティとBCP対策

頻繁な法改正への自動対応(インボイス等)

近年、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正など、バックオフィス業務に影響を与える大きな法規制の変化が続いています。オンプレミス型のシステムであれば、その都度多額の改修費用を支払い、数ヶ月かけてシステムをアップデートしなければなりませんでした。

SaaS型ERPであれば、こうした法改正への対応はベンダー側で標準機能として無償、あるいは最小限の設定変更でリリースされます。法令遵守(コンプライアンス)のリスクを自社で背負い込む必要がなく、常に法に準拠した状態で決算や請求業務を遂行できることは、経理部門にとって大きな救いです。

法対応のための追加投資が不要になることで、長期的な視点での総保有コスト(TCO)は、オンプレミスよりも大幅に低く抑えられる傾向にあります。

リモートワークとマルチデバイス対応

SaaS型ERPは、インターネット環境さえあれば場所を問わずにアクセスできるため、リモートワークとの相性が抜群です。VPNなどの複雑なネットワーク構築を行わなくても、自宅や外出先からセキュアに社内システムを利用できる環境が整います。

また、多くのSaaS製品はスマートフォンやタブレットからの操作を前提に設計されています。経営者が移動中に売上データをリアルタイムで確認したり、現場の担当者が倉庫からスマホで在庫入力を行ったりするなど、デバイスに縛られない働き方を実現します。

「承認のために出社する」といった旧態依然とした慣習を打破し、意思決定のスピードを劇的に高めることが可能になります。

強固なセキュリティとBCP対策

「クラウドは自社サーバーより不安だ」という意見は、もはや過去のものです。世界的なSaaSベンダーは、Amazon(AWS)やMicrosoft(Azure)といった、単一企業では到底実現できないレベルの巨額投資がなされたデータセンターでシステムを運用しています。

24時間365日の監視体制に加え、何重にもバックアップが取られた環境は、災害時やサーバー故障時のデータ消失リスクを最小限に抑えます。自社ビルにサーバーを置く「物理的なリスク」を排除し、万が一の震災時でもインターネットさえつながれば事業を継続できる体制を構築できる点は、BCP(事業継続計画)の観点からも極めて有効です。

最新のサイバー攻撃に対する防御策もベンダー側で随時更新されるため、セキュリティ担当者がいない企業でも、世界最高水準の保護を受けられるようになります。

SaaS型ERPのデメリットと注意点

SaaS型ERPは万能ではありません。その身軽さや低コストを実現するために、トレードオフとして受け入れなければならない制限がいくつか存在します。検討にあたって特に注意すべき3つのポイントを整理しました。

独自業務への対応限界(アドオン不可)

周辺システムとのデータ連携

メンテナンス時間と障害時の対応

独自業務への対応限界(アドオン不可)

SaaS型ERPの最大の制約は、個別のコード改修ができない点にあります。自社独自の計算式や、長年使い続けてきたこだわりの帳票フォーマットをそのままシステム化することは困難です。もし業務プロセスが企業の競争力の源泉(コアコンピタンス)であり、システムを合わせる必要があるなら、SaaSは不向きと言わざるを得ません。

現場からは「今のやり方の方が早い」「システムが使いにくい」といった反発が出ることを覚悟しなければなりません。SaaS導入の成功には、経営層が「業務をシステムに合わせる」という断固たる方針を示し、現場の意識改革をリードすることが不可欠です。

どうしても譲れない機能がある場合は、SaaSの標準機能はそのままに、外部のローコードツールなどを連携させて「外付け」で機能を補うような工夫が必要となります。

周辺システムとのデータ連携

ERPは単体で動くものではなく、銀行システム、SFA(営業支援ツール)、経費精算ソフトなど、多くの周辺システムとデータをやり取りします。SaaS型の場合、これらの連携にはAPIを利用するのが一般的ですが、連携の難易度やコストが想定外に膨らむことがあります。

連携先がAPIに対応していない古いシステム(レガシーシステム)である場合、結局は手動でCSVファイルを書き出してアップロードするというアナログな作業が残ってしまうことも珍しくありません。導入検討時には、どのデータを、どの頻度で、どのような手法で連携させるのかという「データ連携の全体像」を事前に設計しておく必要があります。

複数のSaaSを組み合わせる「ベストオブブリード」な環境を作るためには、各製品の連携実績やAPIの充実度を確認することが極めて重要です。

メンテナンス時間と障害時の対応

SaaS型ERPの運用主導権は、あくまでベンダー側にあります。そのため、バージョンアップに伴うシステム停止(メンテナンス)はベンダーが決めたスケジュールで行われ、ユーザー企業が「この日は決算だから止めてほしくない」と個別に要望を出すことはできません。

また、クラウドサービス全体で障害が発生した際も、自社の情報システム部門にできることは「復旧を待つこと」だけです。大規模なクラウド障害によって、全世界のユーザーが数時間にわたり業務を停止せざるを得なくなった事例も過去に存在します。

契約時には、システムがどの程度の割合で稼働することを保証するかを定めた「SLA(サービス品質保証)」を必ず確認し、障害時の連絡体制や事業継続への影響度を評価しておく必要があります。

大企業の新常識「2層ERP(Two-Tier ERP)」戦略

かつて、グローバル展開する大企業は「シングルインスタンス」と呼ばれる、世界中の全拠点で一つの巨大なERPを使う戦略を理想としてきました。しかし、本社向けの重厚なシステムを海外の小規模な子会社に導入しようとすると、多額のコストと時間がかかり、現地のスピード感を損なうという弊害が露呈しました。

そこで生まれた解決策が「2層ERP(Two-Tier ERP)」戦略です。これは、本社と子会社で異なる特性のERPを使い分け、データの統合を図るハイブリッドな手法です。現在、多くの先進企業が採用しているこの戦略の構造は以下の通りです。

Tier 1(本社):重厚長大なオンプレ/プライベート

Tier 2(子会社):軽量で俊敏なSaaS ERP

API連携によるデータの統合

Tier 1(本社):重厚長大なオンプレ/プライベート

本社の基幹システム(Tier 1)には、SAP S/4HANAなどの高機能でカスタマイズ性の高いERPが配置されます。本社では複雑な原価管理やグループ連結決算、法的要件への厳格な対応が求められるため、自社の業務に合わせて徹底的に作り込まれたシステムが必要です。

ここを無理にSaaS化してしまうと、本社の高度な業務要件を満たせなくなるリスクがあります。本社のTier 1は「強固なガバナンスと複雑性の受容」を優先し、長期的な視点で安定運用することが重視されます。

一方で、この重たいシステムをそのまま世界中の子会社に配布するのは非効率であるため、次のTier 2との使い分けが重要になります。

Tier 2(子会社):軽量で俊敏なSaaS ERP

海外の販売拠点や新設された子会社、買収したばかりの企業(M&A先)などには、NetSuiteやDynamics 365といったSaaS型ERP(Tier 2)を導入します。これら拠点の業務は本社ほど複雑ではなく、何よりも「早く、安く」システムを立ち上げてビジネスを開始することが優先されます。

SaaSであれば、現地のIT担当者が不在でも導入でき、本社の情報システム部門がリモートで管理することも容易です。「本社と同じシステムを使え」と押し付けるのではなく、現地の規模や特性に合った軽快なSaaSを宛てがうことで、子会社の機動力を最大化させます。

また、買収した企業のシステムをTier 2として暫定的にそのまま残し、徐々に本社のガバナンス下へ統合していくといった柔軟なアプローチも可能になります。

API連携によるデータの統合

2層ERP戦略において最も重要なのは、異なるシステム間でデータが分断されないことです。本社は各子会社の売上や在庫、利益の状況をリアルタイムに把握できなければ、グループ全体としての意思決定が行えません。

そこで、クラウド同士やクラウドとオンプレミスを繋ぐAPIや、iPaaS(連携プラットフォーム)を活用し、必要な経営データだけを本社システムへ自動集約する仕組みを作ります。全ての拠点で同じ操作画面を使う必要はありませんが、アウトプットされる「データの定義」を統一し、連結決算の早期化を実現します。

「各拠点の自由度」と「本社のガバナンス」という、相反する2つのニーズをITの力で両立させることこそが、現代のグローバル経営におけるERP活用の正解と言えます。

主要なSaaS型ERP製品比較【外資系・グローバル】

世界市場で高いシェアを誇る外資系SaaS ERPは、多言語・多通貨対応はもちろんのこと、世界中のベストプラクティス(成功事例)が機能として最初から組み込まれている点が強みです。グローバル進出を目指す企業や、海外拠点とのデータ統合を重視する中堅・大企業にとって、これらは極めて有力な選択肢となります。

代表的な3つの製品を比較してみましょう。

SAP S/4HANA Cloud Public Edition

Oracle NetSuite(ネットスイート)

Microsoft Dynamics 365

SAP S/4HANA Cloud Public Edition

ERP界の絶対王者であるSAPが、その持てる技術を全てクラウドに最適化したのがこの製品です。最大の特徴は、世界中の優良企業が採用している「標準フロー」がそのまま提供されることです。

カスタマイズを厳格に制限し、ユーザーにSAPの標準に合わせることを強いる設計になっています。「自社の業務をグローバル水準へ引き上げたい」「2027年問題を見据えて最新のクラウド環境へ移行したい」と考える大企業にとって、最も信頼性の高い選択肢です。

導入ハードルは低くありませんが、一度稼働すれば世界最高峰のガバナンスとデータ分析基盤を手に入れることができます。

Oracle NetSuite(ネットスイート)

世界初のクラウドERPとして誕生したNetSuiteは、現在もクラウドERP市場を牽引するリーダー的存在です。会計、在庫、顧客管理(CRM)、ECまでを一つのデータベースで一元管理できる統合力の高さが最大の特徴です。

スタートアップ企業から大企業の2層ERP用(Tier 2)まで、非常に幅広い規模の企業に採用されています。「将来的に事業が拡大してもシステムを入れ替えたくない」「CRMやECまでシームレスに連携させたい」という成長志向の企業に最適です。

クラウドネイティブな設計であるため、ブラウザ上での操作性が非常に軽く、直感的に扱える点もユーザーから高く支持されています。

Microsoft Dynamics 365

マイクロソフトが提供するDynamics 365の最大の強みは、Windows、Excel、TeamsといったOffice製品との圧倒的な親和性です。ERPからボタン一つでExcelにデータを書き出したり、Teams上で承認通知を受け取ったりと、日常業務の延長線上でシステムを利用できます。

また、CRM(顧客関係管理)機能と密接に連携しているため、営業活動から受注、会計処理までを一気通貫で管理することが得意です。「すでにマイクロソフト製品を社内の標準ツールとして採用している」「ユーザーが使い慣れた操作感を重視したい」という企業にとって、教育コストを抑えられる賢い選択となります。

AI(Copilot)による業務支援機能の拡充も目覚ましく、最新技術をいち早く実務に取り入れられる点も魅力です。

主要なSaaS型ERP製品比較【国産・中堅中小】

日本国内のビジネスに特化し、日本の商習慣や独特の帳票要件を熟知しているのが国産SaaS ERPです。外資系製品に比べて導入コストが抑えやすく、マニュアルやサポートも日本語で充実しているため、国内拠点のみを運営する中堅・中小企業にとって非常に使い勝手の良い選択肢です。

国内での導入実績が豊富な3つのカテゴリを紹介します。

freee(フリー) / マネーフォワードクラウド

OBIC7(オービック) / GLOVIA(富士通)

GRANDIT miraimil / ZAC

freee(フリー) / マネーフォワードクラウド

クラウド会計ソフトのツートップとして知られるこれらの製品は、現在では人事労務や販売管理までをカバーする「クラウドERP」へと進化を遂げています。最大の特徴は、銀行口座やクレジットカードとの自動連携、そして徹底的に使いやすさを追求したUI(操作画面)です。

経理の専門知識が乏しいスタートアップの経営者や、バックオフィスの少人数化を目指す中小企業に圧倒的な支持を得ています。「とにかく手入力の時間を減らしたい」「スマホから経費精算や承認を行いたい」というデジタルネイティブな企業にとって、これ以上の選択肢はありません。

多数の外部アプリとAPI連携ができるエコシステムも発達しており、自社に必要な機能をパズルのように組み合わせて拡張できる柔軟性があります。

OBIC7(オービック) / GLOVIA(富士通)

日本のERP市場で長年トップシェアを維持してきた老舗ブランドのクラウド版です。国産製品の真骨頂は、日本の細かい税制、複雑な商習慣、そして顧客ごとに異なる請求書のレイアウト要求などに対し、標準機能で柔軟に対応できる点にあります。

外資系ERPで苦労する「日本特有の要件」が最初から考慮されているため、導入時に大きな業務変更を強いることなく、スムーズにクラウドへ移行できます。「クラウドの恩恵は受けたいが、現場の混乱を避けるために今の業務フローを大きく変えたくない」と考える日本企業に最適です。

長年の実績に裏打ちされた安心感と、手厚い国内サポート体制は、ミッションクリティカルな基幹システムを預ける上で大きな判断材料となります。

GRANDIT miraimil / ZAC

特定の業種や中堅企業のニーズに特化することで独自の地位を築いている製品群です。例えば「GRANDIT miraimil」は、日本の大手商社などが共同で開発したノウハウをクラウド化したもので、中堅企業が必要な機能をオールインワンで備えています。

また「ZAC」は、広告業やIT制作業のような「プロジェクト別収支管理」を主軸とする企業に特化しています。「汎用的なERPでは自社のプロジェクト管理ができない」「特定の業種に強い製品を使いたい」というニッチながらも深いニーズに応えてくれます。

自社のビジネスモデルが一般的な物販とは異なる場合、こうした業種特化型のSaaSを探すことが、カスタマイズなしでFit to Standardを実現するための近道です。

失敗しないSaaS型ERPの選び方

SaaS型ERPの選定で最も避けるべきは、カタログ上の「機能数」だけで比較してしまうことです。SaaSは「標準機能に業務を合わせる」ことが前提であるため、機能の多さよりも、そのシステムの設計思想が自社の将来像と合致しているかを見極めなければなりません。

失敗しない選定のために、以下の3つの評価基準を必ず確認してください。

Fit to Standardへの許容度確認

APIエコシステムと拡張性

ベンダーのサポート体制とコミュニティ

Fit to Standardへの許容度確認

SaaS型ERP導入の成否は、システム選定前の現場との対話で8割が決まります。現状の業務フローを棚卸しし、「なぜこの作業をこの手順で行っているのか」を問い直してください。単に「慣れているから」という理由で行われている独自業務は、SaaS導入を機に廃止すべきです。

一方で、その独自業務が顧客への提供価値に直結しており、絶対に譲れない場合は、そのSaaSで対応可能か、あるいはPaaS等で補完できるかを厳密に評価します。「できないこと」を隠して導入を進めるのではなく、早い段階で現場に「ここはこの標準フローに変わる」と提示し、合意を得るプロセスが不可欠です。

標準化を受け入れることは、単なる我慢ではなく、属人化した業務を排除し、誰もが回せる組織へと進化するための「筋肉質な経営」への投資であると認識しましょう。

APIエコシステムと拡張性

一つのERPで全ての業務を完結させようとする考え方は、SaaS時代においてはもはや時代遅れです。営業はSalesforce、経費精算は楽楽精算、チャットはSlackといった具合に、各分野で最高のツール(ベストオブブリード)を使い、それらをERPと連携させるのが現在の標準的な姿です。

そのため、選定するERPがいかに簡単に外部システムとつながるか、APIが公開されているか、連携実績は豊富かという点は、機能の有無以上に重要です。データがERPの中に閉じ込められてしまう「情報のサイロ化」を防ぎ、全社のデータがスムーズに循環するエコシステムを構築できる製品を選んでください。

将来的に新しいSaaSを導入した際も、柔軟に連携できる拡張性があれば、システム全体の寿命を大幅に延ばすことができます。

ベンダーのサポート体制とコミュニティ

SaaSは導入して終わりではなく、使い続けていく中で進化させていくものです。そのため、ベンダーのサポート体制の充実度はもちろん、ユーザー同士がノウハウを共有し合う「ユーザーコミュニティ」の活発さも重要な評価指標となります。

他社がどのようにそのSaaSを使いこなし、どのような課題をどう乗り越えたかという生の情報は、ベンダーからのマニュアル以上に価値があります。活発なコミュニティが存在する製品は、ユーザーの声がベンダーに届きやすく、将来的な機能改善にも期待が持てます。

また、クラウド特有の「頻繁なアップデート」を自社でどう受け止めるかという運用設計においても、コミュニティの知見は大きな助けとなります。ベンダーを単なる「業者の提供者」ではなく、共にビジネスを成長させる「パートナー」として評価することが、SaaS活用の成功に繋がります。

まとめ

SaaS型ERPは、初期投資の抑制、導入スピードの向上、そして法改正への自動対応といった多くのメリットを享受できる、現代のIT戦略における中心的な選択肢です。オンプレミス型のような自由なカスタマイズは制限されるものの、Fit to Standard(標準への準拠)を徹底することで、業務の透明性と機動力を高めることが可能になります。

大企業であれば本社と拠点で役割を分ける「2層ERP戦略」、中小企業であればfreeeなどの国産SaaSによる徹底的な効率化など、企業の規模やフェーズに合わせた最適な活用法が存在します。選定にあたっては、機能の比較にとどまらず、自社の業務をいかに標準化できるか、そして外部システムと柔軟に連携できる拡張性を備えているかを重視してください。

変化の激しいビジネス環境において、システムが足かせにならず、むしろ変化を加速させるための基盤となるよう、SaaS型ERPの特性を正しく理解して導入を進めましょう。この記事が、貴社のクラウドERP選定の確かな道標となることを願っています。

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