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BOMとは? E-BOMとM-BOMの違い、種類、Excel管理の課題、DXにおける重要性まで徹底解説

BOM(部品表)とは何か?E-BOM・M-BOMの違いから、ファントムBOM、採番ルール、Excel管理の限界、統合管理のメリット、導入ステップまで、製造業の「背骨」を1万文字超で徹底解説。DX推進に不可欠なデータ基盤構築の完全ガイドです。

目次

  1. BOMとは何か?
  2. 【部門別】BOMの主な種類とそれぞれの役割
  3. E-BOMとM-BOM違いと変換プロセス
  4. BOM管理の要諦「品目コード」の鉄則
  5. なぜBOMの「Excel管理」は限界を迎えているのか
  6. BOMを「統合管理」する5つのメリット
  7. グローバル製造業におけるBOM管理の課題
  8. BOM導入・整備における4つの課題
  9. BOM構築・整備を成功させる5つのステップ
  10. BOMとDX(デジタルトランスフォーメーション)
  11. まとめ

「設計変更が現場に伝わっておらず、古い図面のまま部品を作ってしまった」 「製品の原価計算に時間がかかりすぎて、見積もりの精度が低く、受注してから赤字だと気づいた」 「Excelの部品表が属人化していて、担当者が休むと最新情報がどこにあるのか誰も分からない」

製造業の現場において、こうしたトラブルは日常茶飯事のように起きています。その原因を突き詰めていくと、多くの場合、製品の構成情報である「BOM(部品表)」の管理不全に行き着きます。 「たかが部品の一覧表でしょう?」と思われるかもしれません。しかし、その認識こそが、企業の成長を阻む最大の要因かもしれません。

昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、AIやIoTを導入する前に、まずこの「BOM」がデジタル化・統合化されていなければ、どんな高度な技術も砂上の楼閣に過ぎません。 しかし、BOMの世界は奥が深く、E-BOMとM-BOMの乖離、品目コードの採番ルール、設計変更の適用日管理など、実務的な課題が山積しています。

本記事では、BOMの基礎知識から、実務で必ず直面する「E-BOMとM-BOMの変換プロセス」、Excel管理が引き起こす具体的なリスク、そして統合的なBOM管理システム(PLM/PDM)を構築するための詳細なステップまで解説します。

BOMとは何か?

BOM(ボム)とは、「Bill of Materials」の略称で、日本語では直訳して「部品表」あるいは「構成表」と呼ばれます。

製造業において、ある製品を完成させるために必要な「部品」「材料」「ユニット(中間組付品)」「副資材」などの品目と、それぞれの「必要数量(員数)」や「構成関係(親子関係)」を定義したリスト(構造化データ)のことを指します。

例えば、私たちが普段食べている「カレーライス」を製品だと考えてみましょう。このカレーライスを作るための「レシピ」には、じゃがいも、人参、玉ねぎ、牛肉、カレールー、水、米といった材料と、それぞれの分量が書かれています。製造業におけるBOMも、まさにこのレシピと同じ役割を果たします。「何が、いくつあれば、この製品が作れるのか」を定義した最も基礎的なマスターデータであり、これなしにはモノづくりは一歩も進みません。

BOMが製造業の「背骨」と呼ばれる本質的な理由

BOMは単なる「部品リスト」ではありません。それは製造業という巨大な組織活動を支える「背骨(バックボーン)」です。なぜなら、BOMの情報は、製品のライフサイクルに関わる企業のあらゆる部門の業務に直結し、すべての判断の拠り所となっているからです。

  • ・設計部門:製品の仕様、機能、性能を定義するためにBOMを作成します。これが全ての源流です。
  • ・購買部門:BOMを見て、「何を、いつまでに、いくつ、どこから」調達すべきかを判断し、発注します。
  • ・生産管理部門:BOMを基に、「いつ、どのラインで、何個作るか」という生産計画(MRP)を立てます。
  • ・製造部門:BOM(および作業指図書)に従って、部品をピッキングし、組み立てます。
  • ・原価管理部門:BOMにある部品コストと工数を積み上げて、製品の「原価」を計算し、利益が出るかを判断します。
  • ・営業部門:BOMを基に見積もりを作成し、オプション構成を提案します。
  • ・保守サービス部門:BOMを見て、修理に必要な交換部品を特定し、メンテナンスを行います。

このように、設計から調達、製造、販売、アフターサービスに至るまで、すべての業務プロセスがBOMという共通のデータを介して繋がっています。もしこの背骨(BOM)が間違っていたり、部門ごとに情報が食い違っていたりすれば、企業活動全体に支障をきたし、誤発注や生産遅延、不良品の発生、ひいては経営判断のミスといった重大なトラブルを引き起こします。

BOMの2つの表現形式:サマリーとストラクチャー

BOMには、その表現形式によって大きく分けて「サマリーBOM」と「ストラクチャーBOM」の2種類があります。用途によって使い分けられます。

サマリーBOM(一覧形式)

製品を構成するすべての部品を、階層構造を無視してフラットに並べ、「部品Aが合計5個、部品Bが合計10個」といったように品目ごとに集計した形式です。

「製品を1台作るのに、最終的に部品を何個調達すればよいか」を把握するのに適しており、主に購買部門での発注業務や、原価の概算見積もりなどに使われます。構造が見えないため、組み立て手順は分かりません。

ストラクチャーBOM(階層形式)

製品の構造を、「親(製品)」→「子(ユニット)」→「孫(部品)」というように、組み立ての順序や親子関係に合わせて階層的に表現した形式です。

「どの部品を組み合わせてユニットを作るか」「どの順序で組み立てるか」が分かるため、設計部門での構成検討や、製造現場での工程管理、原価の積上げ計算などに使われます。一般的にBOM管理システムで扱われるのはこの形式です。

製造業以外でも使われるBOMの概念

BOMは製造業特有の言葉と思われがちですが、その概念は他業界にも応用されています。

例えば、ソフトウェア開発における「ソフトウェアBOM(SBOM)」は、あるソフトウェアがどのオープンソースライブラリやモジュールで構成されているかを管理するもので、セキュリティ対策(脆弱性管理)において重要性が増しています。また、建設業における部材管理や、飲食業におけるレシピ管理(原材料管理)もBOMの一種と言えます。

【部門別】BOMの主な種類とそれぞれの役割

「BOMは会社に一つあればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、実際には部門や業務の目的によって、同じ製品でも必要となる情報や、見るべき「構成(ビュー)」が異なります。これがBOM管理を複雑かつ重要にしている要因です。代表的なBOMの種類と役割を解説します。

1. E-BOM(設計部品表):機能を実現する構成

E-BOM(Engineering BOM)は、設計部門が作成・利用するBOMです。

設計図面(CADデータ)に基づいて作成され、「技術的にどのような部品で構成されているか」という「機能的な視点」で定義されます。

例えば、自動車の設計であれば、「エンジン」「トランスミッション」「サスペンション」といった機能単位で構成が組まれます。「製品としての仕様・性能を満たすための構成」が中心であり、設計変更(設変)が発生した際、最初に更新されるのがこのE-BOMです。一般的にPDM(Product Data Management)やPLM(Product Lifecycle Management)システムで管理されます。

2. M-BOM(製造部品表):モノを作るための工程

M-BOM(Manufacturing BOM)は、製造部門や生産管理部門が利用するBOMです。

E-BOMをベースにしつつ、「工場でどのように製造するか」という「工程の視点」を加えて再構成されます。

E-BOMには含まれない情報、例えば「組み立て順序」「使用する工作機械や治具」「中間仕掛品(ファントム)」「梱包材」「副資材(接着剤、グリス、塗料など)」といった、製造に必要なすべての要素が追加されます。また、効率的なライン生産を行うために、E-BOMとは異なる階層構造になることが多々あります。生産管理システムやERPで管理されます。

3. S-BOM(サービス部品表):保守と交換の単位

S-BOM(Service BOM)は、製品出荷後の保守・アフターサービス部門が利用するBOMです。

顧客が使用している製品のメンテナンスや修理を行うために、「交換可能な部品(補修用パーツ)」や「メンテナンスキット」単位で管理されます。

製造時にはバラバラの部品として管理していたものでも、修理の現場では「アッセンブリー(結合部品)」として交換する場合、S-BOMでは一つのかたまりとして扱います。逆に、製造時はセットだったものを、修理時は個別に交換する場合もあります。顧客ごとに納入された製品の構成(インストールドベース)を管理し、いつ、どの部品を交換したかという履歴を残すためにも使われます。

4. 購買BOMと原価BOM

・購買BOM:調達業務に特化したBOMです。「どこから買うか(サプライヤー)」「単価」「リードタイム」「発注単位(ロット)」などの情報が付加されます。メーカー型番と自社品番の紐付けなどもここで行われます。

・原価BOM:標準原価や実際原価を計算するために、部品コストや加工費(チャージレート)情報を紐づけたBOMです。為替変動や原材料価格の変動を反映させ、収益性をシミュレーションするために重要です。

ファントムBOM(ダミー部番)とは?

BOM管理において理解しておくべき重要な概念に「ファントム(Phantom)」があります。「ダミー部番」や「架空品目」とも呼ばれます。

これは、物理的には在庫として保管されないものの、設計上や製造工程上の都合でBOMの階層に入れておく「仮想的な品目」のことです。

例えば、組み立ての途中で一時的にできる「仕掛品」だが、すぐに次の工程で組み込まれてしまうため在庫管理はしないものや、複数の製品で共通して使う「図面上のセット部品」などがこれに当たります。ファントムBOMをうまく活用することで、BOMの階層を整理し、設計効率や生産指示の効率を高めることができますが、システム設定を間違えると所要量計算が狂う原因にもなります。

E-BOMとM-BOM違いと変換プロセス

製造業のBOM管理において問題となり、かつDXの障壁となるのが「E-BOM(設計)」と「M-BOM(製造)」の不整合です。

なぜE-BOMとM-BOMは一致しないのか

「設計した通りに作るのだから、同じBOMでいいはずだ」と考えるのは、現場を知らない人の発想です。E-BOMとM-BOMは、その目的の違いから構造が乖離することが必然です。

例えば、「板金カバー」という部品を例にとります。設計者(E-BOM)にとっては、「板金カバー」という一つの機能部品として図面を描きます。これだけで仕様は定義できます。

しかし、製造現場(M-BOM)にとっては、いきなり「板金カバー」という物体が存在するわけではありません。まず「鉄板(材料)」があり、それを「切断」し、「曲げ加工」し、「穴あけ」し、「塗装」して初めて「板金カバー」になります。

M-BOMでは、この「材料」や「加工プロセス(工順)」、そして塗装に使う「塗料」までを管理する必要があります。このように、「機能(E-BOM)」と「工程(M-BOM)」の視点の違いにより、両者は必ずしも1対1では対応しないのです。

E-BOMとM-BOMが連携しない時に起こる3つのリスク

E-BOMとM-BOMがシステム的に連携しておらず、Excelや手入力で変換・入力している場合、以下のような悲劇が発生します。

  • ・設計変更の伝達漏れ(デッドストックの山):設計部門が不具合修正のために部品を変更(E-BOM更新)したのに、それが製造現場(M-BOM)に正しく伝わらず、古い図面のまま部品を手配・製造し続けてしまう。気付いた時には大量の不良在庫(デッドストック)が積み上がり、廃棄損が発生します。最悪の場合、市場に出荷してリコールになります。
  • ・手戻りの発生(製造できない設計):設計段階で「製造のしやすさ(作りやすさ)」が考慮されておらず、M-BOMを作成する段階になって初めて「この形状では加工できない」「組み立て工具が入らない」「手が届かない」といった問題が発覚し、設計のやり直し(手戻り)が発生します。
  • ・調達ミス(クリティカルな欠品):E-BOMには載っていないがM-BOMには必要な「副資材(接着剤、梱包材、ラベルなど)」の情報がシステム上で欠落し、発注が漏れるケースです。いざ組み立てようとしたら「箱がない」「ラベルがない」という理由で出荷できず、納期遅延を引き起こします。

BOMトランスフォーメーション(BOM変換)の自動化

こうした問題を防ぐために、E-BOMからM-BOMを作成する作業(BOM変換)を、システム上で自動化・半自動化する取り組みが進んでいます。

これを「BOMトランスフォーメーション」と呼びます。E-BOMの構成情報をM-BOMへコピーし、そこで製造独自の情報を付加したり、構成を組み替えたりする作業を、ビジュアルな画面でドラッグ&ドロップで行えるようにします。また、E-BOMに変更があった場合、どの品目がどう変わったのかの差分(Diff)をM-BOM担当者に通知し、反映漏れを防ぐ仕組みが重要です。

BOM管理の要諦「品目コード」の鉄則

BOMをシステムで管理する上で、避けて通れないのが「品目コード(部品番号)」のルール決めです。ここがブレると、BOM管理は破綻します。

有意コード(意味あり)vs 無意コード(意味なし)

品目コードの付け方には、大きく2つの派閥があります。

  • 有意コード(インテリジェントコード):コード自体に意味を持たせる方式です。例:「SC-M4-10」(SC=スクリュー、M4=サイズ、10=長さ)。
    • ・メリット:コードを見ただけでどんな部品か分かるため、現場での識別が容易。
    • ・デメリット:桁数が長くなりがち。分類体系が変わったり、新しい種類の部品が増えたりした時に、ルールが破綻しやすい。
  • 無意コード(ノンインテリジェントコード):単なる連番など、意味を持たない数字の羅列です。例:「10002345」。
    • ・メリット:桁数が短く、どんな部品が増えても枯渇しない。システム管理しやすい。
    • ・デメリット:コードを見ただけでは何かわからないため、必ず名称や属性情報をセットで確認する必要がある。

昔は紙図面での管理だったため有意コードが主流でしたが、現在は検索機能が充実したシステム管理が前提のため、「無意コード」を採用し、属性情報(スペックなど)を詳細に登録する方式がグローバルスタンダードになりつつあります。

品目コードが統一されていない弊害

同じ「M4のネジ」という部品でも、設計部門では「SC-M4」、製造部門では「NEJI-001」、購買部門では「A社製ネジ」といったように、部門ごとに異なる呼び名やコードを使っていることがあります。

BOMを統合するには、これらを全社共通の「品目コード」に統一する必要がありますが、各部門が長年使い慣れたコードを変更することへの抵抗は強く、調整は難航します。しかし、ここを統一しない限り、在庫の適正化も、原価の正確な把握も不可能です。

なぜBOMの「Excel管理」は限界を迎えているのか

多くの中小製造業、あるいは大企業の一部門でも、依然としてBOMをExcel(表計算ソフト)で管理しているケースが散見されます。「使い慣れているから」「手軽だから」という理由ですが、製品が高度化・複雑化し、短納期が求められる現代において、Excel管理は限界を超え、リスクの塊となっています。

原因1:属人化と「神エクセル」化によるブラックボックス

Excelは手軽で柔軟ですが、それが最大の仇となります。特定の担当者が独自の関数や複雑なマクロを組み込んでしまい、その人が異動や退職でいなくなると、誰もメンテナンスできなくなる「属人化」が発生します。

いわゆる「神エクセル」状態となり、「この列の数字はどういう意味?」「マクロが動かないけど直せない」といった事態に陥り、BOMがブラックボックス化してしまいます。

原因2:データの「二重入力」と更新漏れによる手戻り

設計、製造、購買といった部門ごとに、自分たちが使いやすいようにBOMをExcelでコピーして加工・管理しているケースです。これを「バケツリレー」と呼びます。

設計変更が発生した際、設計部門は自分のExcelを直しますが、製造や購買のExcelは自動的には直りません。それぞれの担当者がメールなどで連絡を受け、手動で修正しなければなりません。ここで必ず「更新漏れ」や「入力ミス(コピペミス)」が発生します。「設計と製造でBOMの情報が違う」という致命的な不整合(データの非一貫性)は、Excel管理の宿命です。

原因3:排他制御とバージョン管理の欠如

Excelファイルは、基本的に「誰かが編集している間は、他の人は編集できない(排他制御)」ファイルです。共有フォルダに置いて運用しても、「読み取り専用」になってイライラした経験は誰にでもあるでしょう。

また、メールでファイルをやり取りしていると、「最新」「最新_修正」「最新_修正_最終」といったファイルが乱立し、どれが本当の最新版か分からなくなる「先祖返り」のリスクもあります。

課題4:データの「検索性」と「再利用性」の欠如

「以前作ったあの製品の、このユニットを流用して新製品を作りたい」と思った時、Excel管理では過去の図面や部品を検索するのに膨大な時間がかかります。ファイルを開いてみないと中身が分からないからです。

結果として、探すのを諦めて似たような部品をゼロから新しく設計・登録してしまう。これにより部品の種類が無駄に増え、管理コストや在庫リスクを雪だるま式に増大させてしまいます。

BOMを「統合管理」する5つのメリット

Excel管理の限界を乗り越え、BOMを専用のシステム(PLMや生産管理システム)で「統合管理(一元管理)」することによって、企業は計り知れないメリットを享受できます。

1. 設計変更(設変)情報のリアルタイム共有と即応

設計部門がE-BOMを変更すると、その情報がシステムを通じて即座にM-BOMや購買データにも反映されます。

全部門がリアルタイムに「Single Source of Truth(唯一の正しい情報源)」を参照できるため、伝達漏れによる誤作動や手配ミスがなくなり、設計変更から製造反映までのリードタイムを劇的に短縮できます。

2. 正確で迅速な「原価計算」と見積もり精度の向上

BOMは原価計算の土台です。正確な部品構成(BOM)に、最新の部品単価や加工費レートをシステム上で自動的に掛け合わせることで、製品の原価をリアルタイムかつ精緻に算出できます。

これにより、新製品の見積もり精度が向上し、「どんぶり勘定で受注したら実は赤字だった」という事態を防ぐことができます。また、目標原価に対する達成度合いを設計段階から把握し、コストダウン活動(VE/VA)につなげることも可能です。

3. 部品調達の効率化と「在庫最適化」(MRPの精度向上)

BOMと生産計画が連動することで、「いつまでに、どの部品が、何個必要か」という所要量計算(MRP)が正確に行えます。

必要なものを、必要な時に、必要なだけ調達できるようになり、欠品によるライン停止を防ぎつつ、不要な過剰在庫を削減し、キャッシュフローを改善します。

4. 生産計画の精緻化と製造プロセスの安定

M-BOMがきっちりと整備されることで、製造工程の手順や標準時間が明確化されます。

属人的な「カン・コツ」頼みの製造から脱却し、誰が作業しても同じ品質で作れる体制が整います。また、正確な工数見積もりに基づいて、無理のない生産計画を立案できるようになり、納期の遵守率が向上します。

5. トレーサビリティ(追跡可能性)の確保と品質向上

万が一、製品に不具合が発生した際、統合管理されたBOMがあれば、過去に遡って追跡(トレース)が可能です。

「不具合のあった部品ロットは、いつ入荷し、どの製品のどのシリアル番号に使われたか」を瞬時に特定できます。これにより、リコールの対象範囲を最小限に絞り込み、迅速な回収と原因究明を行うことができ、企業の社会的信用を守ります。

グローバル製造業におけるBOM管理の課題

海外に工場を持つグローバル企業においては、BOM管理の難易度はさらに跳ね上がります。

海外工場との「現地調達部品」の管理

日本の設計部門が作ったE-BOM(グローバル標準)を、海外工場で生産する場合、ネジや梱包材などの一部の部品は、コストやリードタイムの観点から現地で調達したもの(ローカル部品)に置き換えることがあります。

この時、グローバル共通のBOMと、工場ごとのローカルBOMをどう整合させるかが課題となります。システム上で「代替品」として管理するか、工場ごとに別のBOMを持つか、運用ルールを明確にしないと、品質のばらつきや原価の不透明化を招きます。

代替品(互換品)の管理とサプライチェーンリスク

半導体不足や災害、地政学リスクにより、指定した部品が入手困難になるケースが増えています。

こうした事態に備え、BOM上で「この部品がなければ、こちらのメーカーのこの部品でも代用可能」という「代替品(ALT:Alternate)」情報をあらかじめ登録・承認しておくことが重要です。これにより、サプライチェーンが寸断された際も、迅速に切り替えて生産を継続(BCP対策)できます。

BOM導入・整備における4つの課題

BOMの統合管理が重要であることは多くの企業が理解していますが、実際に導入・整備しようとすると高い壁に直面します。

課題1:初期の「データ整備(クレンジング)」の膨大な工数

これまでExcelや紙、あるいは担当者の頭の中に散らばっていたBOMデータを、新しいシステムに入力できる形に整理・統一する作業(データクレンジング)は、想像を絶する労力を要します。

過去の膨大な図面データの移行、品目コードの名寄せ、入力ミスの修正など、泥臭い作業に耐えきれず、プロジェクトが頓挫するケースも少なくありません。

課題2:BOMを維持・管理する「組織文化」とルールの欠如

システムを入れただけではBOMは機能しません。設計変更のたびに正しくデータを更新し、メンテナンスし続ける「運用」が必要です。

しかし、「設計者は図面を描くのが仕事で、BOM入力は面倒な事務作業」という意識が現場に強いと、データ入力がおろそかになり、すぐにシステム上のデータと実態が乖離してしまいます。データを資産として大切に扱う組織文化の醸成が不可欠です。

課題3:部門間の利害対立と「所有権」の争い

「品目コードの体系をどうするか」「E-BOMからM-BOMへの変換タイミングをいつにするか」といったルール決めにおいて、設計部門と製造部門の利害が対立することがあります。

「誰がBOMのオーナー(責任者)なのか」が曖昧なままだと、誰も責任を持ってメンテナンスしようとしません。

課題4:導入コストとROI(費用対効果)の説明難易度

PLMやERPといったBOM管理システムは、ライセンス料や導入コンサルティング費用が高額になりがちです。

一方で、「BOMを整備したら、具体的にいくら売上が上がるのか」というROI(投資対効果)を数字で示すことは難しく、「コスト削減」や「リスク回避」といった守りの効果が中心となるため、経営層の理解と投資決断を引き出すのが難しいという課題があります。

BOM構築・整備を成功させる5つのステップ

BOMの整備は、単なるITツールの導入プロジェクトではありません。全社的な業務改革プロジェクトとして、段階的に進める必要があります。

ステップ1:目的の明確化と対象範囲のスモールスタート

「何のためにBOMを整備するのか」という目的を明確にします。「原価計算の精度向上」なのか、「設計変更ミスの削減」なのか、優先順位を決めます。

そして、いきなり全製品・全部門を対象にするのではなく、まずは新製品プロジェクトや特定の主力製品群に絞って小さく始め(スモールスタート)、効果を検証しながら徐々に範囲を広げていくアプローチが成功の鍵です。

ステップ2:BOMの「あるべき姿」と運用ルールの定義

E-BOMとM-BOMをどのように連携させるか、設計変更が発生した際は「誰が、いつ、どのタイミングで」承認し、BOMを更新するのか、といった業務プロセスと管理ルールを詳細に定義します。ここが曖昧だと、システム導入後に現場が混乱します。

ステップ3:品目コードの標準化とデータクレンジング

BOMの土台となる「品目コード」の採番ルールを統一し、部品の属性情報(材質、メーカー、単価など)を整理して部品マスタを整備します。

部門間の利害調整が必要な最も大変なフェーズですが、ここを避けて通ることはできません。専任のチームを設けて取り組むべきです。

ステップ4:BOM管理システム(PLM/PDM)の導入と連携

定義したルールとデータに基づき、自社の規模や業態に合ったBOM管理システム(PLM、PDM、生産管理システムなど)を選定・導入します。

この際、CAD(設計ツール)やSFA(受注システム)、ERP(基幹システム)など、既存の他システムとどのようにデータを連携させるかも設計します。

ステップ5:専任のBOM管理体制の構築と継続的改善

システム稼働後も、BOMの品質を維持するための体制が必要です。

データの登録・変更権限を持つ「BOMキーパー(BOM管理者)」を設置し、ルール通りに運用されているかを定期的にチェックします。また、現場の要望を聞きながら、使い勝手やルールを継続的に改善していくPDCAサイクルを回します。

BOMとDX(デジタルトランスフォーメーション)

BOMは今、製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の中核として、その価値が再定義されています。

IoT・デジタルツインの基盤としてのBOM

工場内のあらゆる機器をネットにつなぐIoTや、仮想空間に現実の工場や製品を再現する「デジタルツイン」。これらを実現するためには、製品がどのような部品で構成されているかというBOMデータが不可欠です。

BOMに、IoTセンサーから得られた稼働データや品質データを紐づけることで、リアルタイムな予知保全や品質改善が可能になります。

マスカスタマイゼーションとコンフィギュレータBOM

顧客一人ひとりの要望に合わせて仕様を変える「マスカスタマイゼーション」を実現するには、膨大なバリエーションのBOMを効率的に管理する必要があります。

すべてのパターンのBOMを用意するのではなく、あらかじめ定義したルールに基づいて、注文に応じて自動的にBOMを生成する「コンフィギュレータ(仕様選定)」機能と連携したBOM管理が求められています。

まとめ

BOM(部品表)とは、製造業における製品の「構成図」であり、全社をつなぐ「情報インフラ」です。「良い製品を作る」ことと同じくらい、「良いBOMを作る」ことは重要です。

BOMを制する者は、コストを制し、納期を制し、品質を制します。アナログでバラバラな管理から脱却し、統合されたBOMという強固な背骨を手に入れること。それこそが、激動の製造業を生き抜くための最強の武器となるはずです。

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