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国内外のDX成功事例30選|日本と海外の差は?IPAのDX白書のポイント・面白い事例まで解説【2025年最新動向】
DX成功事例30選を国内外(日本・米国・欧州)の最新動向とともに徹底解説。IPA「DX白書」から読み解く日本企業の課題や、Amazon、ユニクロ、スシローなど身近で面白い事例から、成功の共通点と推進ステップまで網羅します。
目次
「DXに取り組まなければならないのは分かっているが、具体的に何をすればいいのかイメージが湧かない」
「海外企業が進んでいると聞くが、日本企業と比べて具体的に何が違うのか?」
2025年を迎え、多くの日本企業がDX推進の壁に直面しています。経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」問題が現実のものとなりつつある今、単なる業務効率化を超えた、ビジネスモデルそのものの変革が求められています。しかし、IPA(情報処理推進機構)が発行する「DX白書」などのデータを見ると、日本企業は米国企業に比べて、その取り組みや成果において依然として大きな後れを取っているのが実情です。
本記事では、日本と海外の決定的な差を解説するとともに、AmazonやTeslaといった海外の巨人から、ワークマンやスシローといった国内の身近な企業まで、合計30件もの成功事例を一挙に紹介します。成功している企業には、業種や規模を超えた「共通の法則」があります。
本記事を通じて、他社の成功パターンを自社の戦略に取り入れ、変革への確かな道筋を見つけてください。
そもそもDXとは?
DXとは、単にアナログな作業をデジタルに置き換えること(デジタイゼーション)ではありません。
経済産業省の定義に基づくと、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。
- ・デジタイゼーション(Digitization):アナログデータのデジタル化(例:紙の書類をPDF化する)
- ・デジタライゼーション(Digitalization):個別の業務プロセスのデジタル化(例:オンライン会議ツールの導入、ワークフローシステムによる承認)
- ・デジタルトランスフォーメーション(DX):事業や経営全体の変革(例:サブスクリプションモデルへの転換、AIによる全自動需要予測)
つまり、デジタル技術はあくまで「手段」であり、最終的な「目的」は、新しい価値を創出し、市場での競争力を高めることにあります。この本質を理解せずにツール導入だけを進めても、それはDXではなく単なるIT化で終わってしまいます。
【IPA DX白書】国内外のDX動向と2025年の崖
IPA(情報処理推進機構)が定期的に発行する「DX白書」は、日本と米国の企業のDX取り組み状況を比較調査した重要な資料です。ここから読み取れるのは、日本企業が置かれている厳しい現状と、今後取り組むべき課題の輪郭です。
日本と海外の圧倒的な差
最新のDX動向において、日本企業は米国企業に対し、依然として大きな差をつけられています。特に顕著なのが、「DXへの取り組み内容」と「成果」における違いです。
米国企業では、DXを「新規ビジネスの創出」や「顧客体験の変革」といった攻めの戦略として捉え、実際に成果を上げている割合が高いのに対し、日本企業の多くは「既存業務の効率化」や「コスト削減」といった守りの領域に留まっています。
また、「経営層がDX推進にコミットしているか」「全社的なDX戦略が策定されているか」という点においても、日本は米国に比べて数値が低く、現場レベルの改善活動に終始してしまっている現状が浮き彫りになっています。
日本のDXが進まない3つの壁
なぜ、日本企業のDXはこれほどまでに遅れているのでしょうか。主な阻害要因として、以下の3つの構造的な壁が存在します。
レガシーシステムの存在
長年にわたり改修を重ねて複雑化した古い基幹システムが、ブラックボックス化しています。これが新しいデジタル技術との連携を阻み、データの維持管理に多大なコストと人的リソースを奪われる「技術的負債」となっています。
デジタル人材の不足
DXを構想し推進できるプロジェクトリーダーや、データを分析できるデータサイエンティストといった専門人材が圧倒的に不足しています。外部ベンダーへの依存度が高く、社内にノウハウが蓄積されないことも問題です。
保守的な組織文化
「失敗を許容しない減点主義」や「前例踏襲」といった企業風土が根強く、リスクを伴う変革への挑戦を躊躇させます。また、部門間の縦割りが強く、全社横断でのデータ活用が進みにくいという組織的な課題もあります。
「2025年の崖」問題の再燃
経済産業省が2018年の「DXレポート」で指摘した「2025年の崖」問題は、今まさに現実の危機として再燃しています。これは、複雑化・老朽化した既存システム(レガシーシステム)が残存した場合、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというものです。
2025年を迎えた現在、古いシステムの保守を担当していた団塊世代のエンジニアが引退し、システムの維持が困難になるリスクが高まっています。さらに、SAPなどの主要なERPシステムのサポート終了(2027年問題など)も迫っており、システム刷新とビジネス変革を同時に進めなければ、市場から退場を余儀なくされるという危機感が、かつてないほど高まっています。
【分野・地域別】国内外のDX成功事例30選
ここからは、実際にDXを推進し、ビジネスを変革させた企業の事例を国内外合わせて30件紹介します。それぞれの企業が「どのような課題」に対し、「どのような技術」を使って解決し、「どのような価値」を生み出したのかに注目してください。
【海外編】身近で面白いDX先進事例 15選
海外、特に米国や中国、欧州の企業は、デジタルネイティブな発想で既存のビジネスモデルを破壊し、新たな顧客体験を生み出しています。
1. Amazon(米国 / 小売)
Amazonの強みは、ECサイトでの購買履歴に基づく圧倒的なレコメンデーション機能だけではありません。物流倉庫に導入された「Amazon Robotics」は、棚自体が動いて作業員の元へ商品を運ぶことで、ピッキング効率を劇的に向上させました。
また、レジなし店舗「Amazon Go」では、画像認識AIとセンサー技術により、商品を手に取って店を出るだけで決済が完了する「ジャスト・ウォーク・アウト」という革新的な顧客体験を提供しています。
2. Netflix(米国 / エンタメ)
もともとはDVDの郵送レンタル業でしたが、ストリーミング配信への完全移行という大胆なピボット(方向転換)を行いました。彼らのDXの真髄はデータ活用にあります。世界中の会員の視聴データ、停止位置、検索ワードなどをAIで詳細に分析し、「誰にどの作品を薦めるか」をパーソナライズしています。
さらに、「House of Cards」などのオリジナル作品制作においても、「どのようなキャスト、ストーリー展開ならヒットするか」をデータに基づいて判断し、確実にヒットを生み出す仕組みを構築しました。
3. Starbucks(米国 / 飲食)
スターバックスは「モバイルオーダー&ペイ」をいち早く導入し、飲食業界のDXをリードしました。アプリで事前に注文・決済を済ませれば、店舗で列に並ぶ必要がありません。これにより、顧客の待ち時間を解消すると同時に、店舗側のレジ業務負担を軽減しました。
さらに、アプリを通じて蓄積された膨大な顧客データを活用し、個人の好みに合わせたクーポン配信や新商品提案を行うことで、顧客ロイヤルティ(リピート率)の大幅な向上を実現しています。
4. DBS銀行(シンガポール / 金融)
かつては「対応が遅い」と不評だったDBS銀行は、「World’s Best Digital Bank」に選ばれるほどの変革を遂げました。「銀行を銀行(手続き)と感じさせない」をスローガンに、徹底的なデジタル化を推進。シンガポール政府の国民ID「Singpass」と連携し、書類提出なしでの即時口座開設を実現しました。また、行員にハッカソンへの参加を促すなど、「2万9000人のスタートアップ」として組織文化を変革した点も特筆すべき成功要因です。
5. Tesla(米国 / 製造・モビリティ)
テスラは自動車を「ハードウェア」から「ソフトウェア」へと定義し直しました。同社の電気自動車(EV)は、販売後もOTA(Over The Air:無線通信)によるソフトウェアアップデートで機能が進化し続けます。加速性能の向上、航続距離の延長、自動運転機能の追加などが、スマホのOS更新のように行われるのです。
これにより、「買った瞬間が最も古く、劣化していく」という従来の自動車の常識を覆し、常に最新の価値を提供し続けるビジネスモデルを確立しました。
6. Domino's Pizza(米国 / 飲食)
「我々はピザ屋ではなく、ピザを売るIT企業だ」と宣言し、株価を数十倍に成長させました。彼らが開発した「AnyWare」プラットフォームは、スマホはもちろん、スマートウォッチ、Twitter(X)、スマートスピーカー、さらには車のダッシュボードからでもピザを注文可能にしました。
また、配達状況をリアルタイムで地図上に表示する「ピザトラッカー」や、自動運転車による配送実験など、テクノロジーで注文と受け取りのストレスを極限まで減らすことに注力しています。
7. Walmart(米国 / 小売)
世界最大の小売業ウォルマートは、Amazonに対抗すべくDXに巨額投資を行っています。全米数千店舗を物流拠点として活用し、オンラインで注文した商品を店舗で受け取る「BOPIS」を強化。
また、店舗内の棚卸しロボットや、AIによる需要予測システムを導入し、在庫切れによる機会損失を防いでいます。リアル店舗という資産とデジタルを融合させたOMO(Online Merges with Offline)戦略の成功例です。
8. Siemens(ドイツ / 製造)
重電大手のシーメンスは、製造業のデジタル化において世界の先頭を走っています。自社工場の完全自動化・デジタルツイン化で培ったノウハウを、産業用IoTプラットフォーム「Mindsphere(マインドスフィア)」として外販。
顧客の工場の稼働データを分析し、生産効率化や予知保全を支援しています。単に製品を売るだけでなく、「製造の最適化」というソリューションを提供するサービス企業へとビジネスモデルを進化させました。
9. Uber(米国 / モビリティ)
ウーバーは、タクシーを一台も所有せずに世界最大の配車サービス企業となりました。スマホアプリを通じて「移動したい人」と「ドライバー」をマッチングさせるプラットフォームビジネスの代表格です。
GPSによる正確な位置情報、ダイナミックプライシング(需給による価格変動)、相互評価システムといったデジタル技術を組み合わせることで、移動における「不確実性」や「不安」を解消し、全く新しい移動体験を創出しました。
10. Spotify(スウェーデン / エンタメ)
音楽ストリーミングサービスのスポティファイは、AIによる高度なパーソナライズで支持されています。「Discover Weekly」などのプレイリスト機能は、ユーザーの聴取傾向を分析し、本人がまだ知らないけれど気に入るであろう曲を提案します。
また、開発組織においても、数名の小規模チーム「スクワッド」に権限を委譲するアジャイルな組織運営(スポティファイモデル)を採用しており、機能改善のスピードが極めて速いのが特徴です。
11. LEGO(デンマーク / 製造・玩具)
2000年代前半の経営危機から、デジタルとの融合で復活しました。ユーザーが自分のデザインしたレゴ作品を投稿し、投票で商品化が決まる「LEGO Ideas」というデジタルコミュニティを運営し、ファンとの共創を実現。
また、物理的なブロックとアプリを連動させた「レゴ スーパーマリオ」や、AR(拡張現実)を使った遊びなど、フィジカルとデジタルの境界を曖昧にする新しい遊びの体験を提供しています。
12. Nike(米国 / アパレル)
ナイキは、Amazonでの販売を停止し、自社アプリや直営店を通じた直接販売(D2C)にシフトしました。「Nike Run Club」などのアプリでランナーの活動データを収集し、それに基づいて商品を開発したり、パーソナライズされた提案を行ったりしています。
また、店舗ではアプリを使ってマネキンの着ている商品の在庫を確認したり、試着室を予約したりできるなど、デジタルを活用したシームレスな購買体験を構築しています。
13. Revolut(英国 / 金融)
英国発のフィンテック企業レボリュートは、既存の銀行システムに依存しない金融スーパーアプリを提供しています。一つのアプリで、数十種類の通貨の保有・両替、海外送金、株式や暗号資産への投資、旅行保険の加入などが、手数料無料または格安で即座に行えます。
UI/UXが極めて優れており、「お金の管理」にまつわる煩わしさを一掃したことで、若年層を中心に爆発的な人気を集めています。
14. シンガポール政府(行政)
「スマートネーション構想」の下、国民一人ひとりにデジタルID「Singpass」を発行。これ一つで、納税、年金確認、公営住宅の申し込みといった行政手続きだけでなく、銀行口座開設や不動産契約といった民間サービスでの本人確認も完結します。
「ワンスオンリー(一度の入力で済む)」を徹底し、国民生活の利便性を劇的に向上させています。
15. General Electric (米国 / 製造)
航空機エンジンや発電タービンに多数のセンサーを取り付け、稼働状況をリアルタイムでモニタリングする「インダストリアル・インターネット」を提唱。故障の予兆を検知して事前に部品を交換する「予知保全」サービスを提供することで、製品販売後の保守サービスで収益を上げる「サービタイゼーション(製造業のサービス化)」を実現しました。
【国内編】身近で面白いDX先進事例15選
日本国内でも、独自の課題解決や顧客体験の向上に向けて、ユニークなDXに取り組む企業が増えています。
16. コマツ(製造)
建設機械大手のコマツは、建機にGPSと通信機能を搭載した「KOMTRAX(コムトラックス)」を開発しました。世界中で稼働する建機の位置や稼働状況を遠隔で把握し、盗難防止やローンの与信管理に活用。
さらに、部品の消耗度合いを予測して最適なタイミングで交換を提案するなど、「止まらない建機」という価値を提供し、顧客の信頼を勝ち取りました。
17. ワークマン(小売)
作業服専門店から一般向けのアウトドアウェアへ進出し大躍進したワークマン。その裏には「エクセル経営」と呼ばれる徹底したデータ活用があります。全社員がエクセルを使いこなし、店舗ごとの在庫や売上を分析。
「声の大きな役員」の勘ではなく、データに基づいて商品開発や発注を行うことで、値引き販売をほぼゼロにしました。また、インフルエンサーを「製品開発アンバサダー」として巻き込み、SNSでの評判を製品改良に活かすサイクルも確立しています。
18. スシロー(飲食)
回転寿司のスシローは、すべての寿司皿にICタグを取り付け、レーン上を流れる寿司の鮮度管理と需要予測を行っています。
「どのネタが、いつ、どれだけ取られたか」という年間10億件以上のデータをAIが分析し、レーンに流すべきネタと量を店長に指示。これにより、廃棄ロスを減らしつつ、食べたい寿司が常に流れている状態を作り出し、顧客満足度と利益率の両方を高めています。
19. ユニクロ(ファーストリテイリング)(小売)
「情報製造小売業(有明プロジェクト)」を掲げ、サプライチェーン全体のDXを推進しています。全商品にRFIDタグ(ICタグ)を縫い付け、セルフレジでの瞬時決済や、棚卸し作業の自動化を実現。
さらに、アプリ会員の購買データや気候データをAIで分析し、生産量や配送ルートを最適化することで、「作りすぎ」「運びすぎ」の無駄を極限まで削減しようとしています。
20. ローソン(小売)
コンビニエンスストアのDXとして、AIによる自動発注システムの全店導入を進めています。店舗ごとの客層、天気、イベント情報などを加味してAIが発注数を推奨することで、店長の業務時間を大幅に削減し、食品ロスの削減にも貢献しています。
また、東京ポートシティ竹芝店などでは、アバターロボットによる遠隔接客や、デジタルサイネージを活用した広告配信など、近未来的な店舗体験の実証実験も積極的に行っています。
21. メルカリ(IT・C2C)
メルカリは、出品時に写真を撮るだけでAIが商品名やカテゴリーを自動入力したり、売れやすい価格を提案したりする機能により、出品のハードルを極限まで下げました。
また、不正出品の検知やカスタマーサポートにもAIを活用し、安全な取引環境を維持しています。C2C(個人間取引)という新しい市場をテクノロジーで信頼できるものにした点が最大の功績です。
22. トヨタ自動車(製造・モビリティ)
「クルマ屋」から「モビリティカンパニー」への変革を宣言。すべての車をネットにつなぐ「コネクティッドカー」戦略を進め、収集した走行データを活用した保険サービスや、緊急時の自動通報システムを提供しています。
また、静岡県裾野市に建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」では、自動運転、ロボット、スマートホームなどが連携する未来の生活インフラそのものを開発・実証しようとしています。
23. 三菱UFJフィナンシャル・グループ(金融)
メガバンクの中でもDXに積極的で、勘定系システムの刷新やクラウド化を進めています。注目すべきは、外部企業との連携を容易にするAPIの公開です。これにより、家計簿アプリや会計ソフトとのデータ連携がスムーズになり、顧客の利便性が向上しました。
また、デジタル子会社「Japan Digital Design」を設立し、銀行本体とは異なる人事制度や文化で、スピーディーなサービス開発を行っています。
24. 資生堂(製造・化粧品)
資生堂は、デジタルを活用したパーソナライズ美容に力を入れています。スマホで肌を撮影するとAIが肌状態を分析し、その日の肌と環境に合わせた美容液を抽出するIoTマシン「Optune(オプチューン)」(※現在はサービス終了し知見を他に活用)などを開発。
また、全世界の美容部員(ビューティーコンサルタント)にデジタルデバイスを配布し、オンラインカウンセリングやSNSでの情報発信を強化するなど、顧客接点のデジタル化を急速に進めています。
25. アスクル(小売・EC)
オフィス用品通販のアスクルは、物流センター「LOHACO」に自動搬送ロボットやピッキングロボットを大量導入し、人手不足の中でも出荷能力を維持・向上させています。
また、配送ルートの最適化や、ビッグデータを用いた「到着予定時刻の精緻な予測」により、再配達の削減と顧客満足度の向上を実現しています。
26. ブリヂストン(製造)
タイヤ世界最大手のブリヂストンは、タイヤの売り切りビジネスからの脱却を進めています。タイヤの空気圧や温度を監視するセンサー技術「Tirematics」を活用し、運送会社向けにタイヤの状態を遠隔監視するサービスを提供。
適切なタイミングでのメンテナンスや交換を提案することで、パンクによる運行停止リスクを防ぎ、燃費向上にも貢献する「トータル・ソリューション・プロバイダー」への転換を図っています。
27. りそなホールディングス(金融)
りそなグループは、「銀行の常識を変える」取り組みとして、窓口業務のデジタル化やアプリ開発に注力しています。「りそなグループアプリ」は、分かりやすいUIと多機能さで銀行アプリの中でもトップクラスの評価を得ており、振込や住所変更など多くの手続きをスマホで完結させました。
これにより、店舗の事務作業を削減し、行員がコンサルティング業務に注力できる体制を作りました。「スマホがあなたの銀行になる」を体現した事例です。
28. ソニーグループ(製造・エンタメ)
ソニーは、エレクトロニクス、エンタメ、金融を持つ複合企業としての強みをDXで活かしています。イメージセンサーにAI処理機能を搭載した「インテリジェントビジョンセンサー」は、現場での高度なデータ解析を可能にし、小売店での顧客行動分析などに活用されています。
また、PlayStation Networkなどのネットワークサービスを通じて顧客と直接つながり、サブスクリプション型の安定収益モデルを確立した、コングロマリット(複合企業)のDX成功例です。
29. ZOZO(小売・EC)
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOは、テクノロジーで「サイズへの不安」を解消しようとしています。過去には身体計測スーツ「ZOZOSUIT」を無料配布し、膨大な体型データを収集しました。
現在では、AIとファッションコーディネーターの知見を融合させた「似合う」を提案するAI活用や、靴の計測マット「ZOZOMAT」など、「計測技術×データ」でECの限界を突破する取り組みを続けています。
30. LINE(IT・プラットフォーム)
国内で圧倒的なシェアを持つLINEは、メッセージアプリを起点とした「スーパーアプリ」戦略を展開しています。
LINE Payによる決済、LINE証券などの金融、LINEドクターによる遠隔診療、さらには自治体の公式アカウントによる行政手続きまで、一つのアプリで生活のあらゆるシーンをカバー。生活者の最も身近なインターフェースとして、社会インフラとしての地位を確立しています。
事例から学ぶ、国内外のDX成功企業に共通する5つの特徴
これら30の成功事例を分析すると、業種や国が違っても、成功企業には共通する5つの特徴があることが分かります。
1. 経営トップによる強力なコミットメント
成功している企業のすべてにおいて、経営トップが「DXは経営戦略の柱である」と明言し、自ら旗振り役となっています。
IT部門任せにするのではなく、予算と権限を与え、トップダウンで組織の壁を突破しています。テスラのイーロン・マスク氏や、ユニクロの柳井正氏のように、リーダーの強い意志が変革の原動力です。
2. 顧客体験(CX)中心の設計
「AIを使いたい」「ブロックチェーンを導入したい」といった技術先行ではありません。「顧客の待ち時間をなくす(スタバ)」「サイズ選びの不安を消す(ZOZO)」といった、顧客の課題解決や体験価値(CX)の向上がすべての出発点になっています。技術はあくまでそのための手段として選定されています。
3. データ利活用とAIの積極的導入
勘や経験ではなく、データに基づいた意思決定(データドリブン経営)が徹底されています。スシローの寿司ネタ管理やNetflixの作品推奨のように、収集したデータをAIで分析し、リアルタイムでビジネスのアクションに反映させるループが回っています。
4. アジャイルな組織文化と内製化
変化の激しい時代において、完璧なシステムを何年もかけて作るウォーターフォール型開発は適していません。Spotifyやメルカリのように、小さく作って素早くリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善を繰り返す「アジャイル開発」が主流です。
また、それを実現するためにエンジニアを社内に抱える「内製化」が進んでいるのも共通点です。
5. 「コト売り」へのビジネスモデル変革
単に製品を売って終わり(モノ売り)ではなく、製品を通じて得られるデータや体験を継続的に提供する(コト売り)モデルへ転換しています。
コマツの建機管理やブリヂストンのタイヤ管理のように、顧客の成功を支援し続けることで、収益の安定化と高付加価値化を実現しています。
日本のDX推進を成功させるためには?
海外との差を埋め、日本企業がDXを成功させるためには、具体的なステップを踏んで着実に進める必要があります。
ステップ1:経営ビジョンの明確化と課題の棚卸し
まずは、「なぜDXをやるのか」「DXでどのような会社になりたいのか」というビジョンを経営陣が言語化する必要があります。
同時に、社内の業務プロセスやシステムの現状を調査し、何がボトルネックになっているかを徹底的に棚卸しします。
ステップ2:スモールスタートとPoC(概念実証)
いきなり全社規模のシステム刷新を行うのはリスクが高すぎます。「特定の部署の、特定の業務」に絞って、小さくデジタル化を試みます(PoC)。
例えば、「問い合わせ対応にチャットボットを入れてみる」「一つのラインでIoTセンサーを試す」などです。ここで小さな成功体験(クイックウィン)を作り、社内の懐疑的な声を払拭することが重要です。
ステップ3:データ基盤の整備と人材育成
PoCと並行して、各部署に散らばっているデータを一元管理できる基盤(クラウドストレージやデータレイク)を整備します。
また、ツールを入れても使う人がいなければ意味がありません。外部パートナーの知見を活用しつつ、社内研修(リスキリング)を通じて、デジタルリテラシーの高い人材を育成・発掘していきます。
ステップ4:全社展開と組織文化の変革
スモールスタートで得た知見と成果を、他の部署や事業へ横展開します。このプロセスを通じて、徐々に「データで語る」「失敗を恐れず挑戦する」という新しい組織文化を醸成していきます。
DXは一過性のプロジェクトではなく、永続的な企業文化の変革であることを忘れてはなりません。
まとめ
DXとは、デジタル技術を武器に、顧客への提供価値とビジネスモデルを根本から進化させる取り組みです。IPAの「DX白書」が示すように、日本企業は欧米に比べて遅れをとっていますが、それは裏を返せば「伸び代」が大きいということでもあります。
AmazonやNetflixのようなグローバルジャイアントの事例は遠い世界の出来事に思えるかもしれませんが、スシローやワークマンといった国内企業の事例は、既存の業界構造の中でも工夫次第で大きな変革が可能であることを教えてくれます。
重要なのは、以下の3点です。
- ・トップが覚悟を決めること
- ・顧客の困りごとからスタートすること
- ・小さく始めて、高速で改善すること
まずは、自社の業務の中で「もっとこうなれば顧客が喜ぶのに」「ここが非効率だ」と感じる部分を見つけ、そこからデジタルの力で何ができるか、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。その積み重ねこそが、御社の未来を切り拓くDXとなるはずです。
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