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インフラDXとは?国土交通省の取り組みから建設・交通分野の成功事例まで解説

インフラDXとは何か、その意味と目的を建設DXとの違いを含めて徹底解説。なぜ今、老朽化対策や災害対応、人手不足解消のためにDXが急務なのか?国土交通省の推進計画から、BIM/CIM、IoT、AIなどの主要技術、先進事例、課題まで網羅します。

目次

  1. インフラDXとは?
  2. なぜ今、インフラDXの推進が急務なのか?
  3. 国土交通省が主導するインフラDX推進の全体像
  4. インフラDXを支える主要テクノロジー
  5. インフラDXがもたらすメリット
  6. インフラDX推進における課題と障壁
  7. インフラDXの先進的な取り組み事例
  8. まとめ

道路、橋、トンネル、上下水道、電力網、通信網。私たちの社会生活や経済活動を支える、これらの「社会インフラ」は、今、大きな岐路に立たされています。高度経済成長期に集中的に整備されたインフラの多くが老朽化し、その維持管理が大きな課題となっているのです。

この喫緊の課題に対し、最新のデジタル技術を活用して、インフラの計画から建設、維持管理、そして利用に至るまでの全てのプロセスを変革しようとする動き、それが「インフラDX」です。

この記事では、インフラDXの基本的な意味から、なぜ今それが日本の未来にとって不可欠なのか、それを支える主要な技術、そして具体的なメリットや先進的な取り組み事例まで、詳しく解説していきます。

インフラDXとは?

インフラDXとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、BIM/CIM(ビム/シム)、ドローンといったデジタル技術を全面的に活用し、道路、橋梁、トンネル、河川、ダム、上下水道、港湾、空港、そして電力・ガス・通信といった、私たちの社会生活や経済活動を支える様々な社会インフラに関して、その計画、調査、設計、建設(施工)、維持管理、そして利用に関わる全てのプロセスを変革することを指します。

その核心は、これまで個別の施設やプロセスごとに、あるいは担当者の経験や勘に基づいて行われてきたインフラ関連業務に、データに基づいた科学的なアプローチを導入することにあります。これにより、インフラ構造物の長寿命化と、その管理業務の大幅な効率化、そして国民生活の利便性や安全性の向上を同時に実現することを目的としています。

インフラDXが目指すもの

インフラDXが目指す究極的な目標は、デジタル技術を最大限に駆使することで、社会インフラ全体の安全性、生産性、そして利便性を飛躍的に向上させ、将来にわたって持続可能な社会基盤を構築・維持していくことにあります。

具体的には、

・インフラの老朽化対策:データに基づいた計画的な維持管理により、インフラをより長く、安全に利用可能にする(長寿命化)。

・生産性の向上:建設プロセスや維持管理業務を効率化・自動化し、人手不足に対応する。

・安全・安心の確保:自然災害のリスクを予測し、被害を最小化するための対策を強化する。また、インフラの異常を早期に検知し、事故を未然に防ぐ。

・国民生活の利便性向上:交通渋滞の緩和や、公共交通機関の利便性向上、行政手続きのオンライン化などを通じて、国民の生活の質を高める。

・環境負荷の低減:インフラの建設・運用におけるエネルギー消費量やCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルに貢献する。

これらの目標達成を通じて、より安全で、豊かで、持続可能な社会を実現することが、インフラDXの大きな狙いです。

「建設DX」との関係性

インフラDXとよく似た言葉として「建設DX」があります。この二つの言葉は密接に関連していますが、その対象とする範囲に違いがあります。

建設DXは、主に建設プロジェクトにおける生産プロセス、すなわち計画、調査、設計、施工、検査といった段階におけるデジタル技術の活用と、それによる変革に焦点を当てています。BIM/CIMの導入やICT施工による生産性向上などが、建設DXの中心的なテーマとなります。

一方、インフラDXは、この建設DXの取り組みを包含しつつ、さらにその先の完成したインフラ構造物の維持管理や、道路交通情報システムや災害情報システムといった、インフラを活用した「サービスの提供・利用」までを含む、より広範で社会的な視点での変革を指します。

建設プロセスだけでなく、インフラのライフサイクル全体と、それを利用する社会システム全体を対象とする、より大きな概念と言えます。建設DXは、インフラDXを実現するための重要な構成要素の一つと位置づけることができます。

なぜ今、インフラDXの推進が急務なのか?

インフラDXの推進は、単なる技術的なトレンドではなく、日本の社会インフラが抱えるいくつかの深刻な課題に対応し、その持続可能性を確保するために、避けては通れない取り組みとなっています。

老朽化する社会インフラの維持管理

日本の道路、橋梁、トンネル、上下水道といった社会インフラの多くは、1960年代から70年代の高度経済成長期に集中的に整備されました。これらのインフラは、今後、建設から50年以上が経過するものが加速度的に増加していきます。

老朽化が進むインフラを安全に維持していくためには、適切な点検と修繕が不可欠ですが、その対象となる施設の数が膨大であるため、従来の対症療法的な(問題が発生してから対応する)修繕方法だけでは、維持管理にかかるコストが増大し続けるだけでなく、橋梁の崩落やトンネルの天井板落下など予期せぬ重大事故が発生するリスクも高まっています。

インフラDXによって、センサー技術やAIを活用して劣化状況を正確に予測し、壊れる前に対策を講じる「予防保全」へと転換することで、インフラの長寿命化とライフサイクルコストの削減を両立させることが急務となっています。

深刻な担い手不足と技術継承の課題

社会インフラの建設や維持管理を実際に担う現場の技能者や技術者は、他の産業以上に深刻な人手不足と高齢化に直面しています。若者の入職者数が長期的に低迷する一方で、これまで現場を支えてきた熟練技能者が今後大量に退職していくことが見込まれています。

また、インフラの点検や劣化診断といった業務は、長年にわたる熟練者の経験や勘といった、個人の暗黙知に頼っている部分が多く、その高度なノウハウを若手に継承していくことが大きな課題となっています。

インフラDXは、ロボット技術や自動化技術を導入して現場作業を省人化するとともに、熟練者の知見をAIなどに学習させ、データとして形式知化することで、この二つの課題に対する有効な解決策を提供します。

激甚化・頻発化する自然災害への対応

地震、台風、集中豪雨といった自然災害が、近年、その規模や頻度を増している傾向にあります(激甚化・頻発化)。これらの大規模な自然災害が発生した場合、社会インフラが甚大な被害を受け、国民生活や経済活動に深刻な影響を及ぼします。

災害発生時に、被害状況を迅速かつ正確に把握し、早期に復旧作業に着手するための、強靭な情報システムと対応体制の構築が不可欠です。

インフラDXは、ドローンや衛星画像、各種センサーなどを活用して被災状況をリアルタイムで把握したり、AIが最適な復旧計画を立案したり、あるいはデジタルツイン(後述)を用いて災害時の被害を事前にシミュレーションしたりすることで、防災・減災能力を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

カーボンニュートラルへの貢献

地球温暖化対策として、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現が、世界的な目標となっています。社会インフラの分野も、この目標達成に向けて大きな貢献が求められています。

インフラの建設段階においては、建設機械の電動化や、BIM/CIMを活用した設計最適化による資材使用量の削減などが考えられます。また、運用段階においては、道路交通の円滑化による自動車からのCO2排出量削減や、再生可能エネルギー発電設備の導入促進、スマートグリッド(次世代送電網)によるエネルギー効率の向上などが重要な取り組みとなります。

インフラDXは、これらのカーボンニュートラルに貢献する施策を、データとデジタル技術によって効率的かつ効果的に推進するための基盤となります。

国土交通省が主導するインフラDX推進の全体像

日本のインフラDXは、個々の企業や自治体の取り組みだけでなく、政府、特に国土交通省が国家戦略の重要な柱と位置づけ、具体的な計画と目標を掲げて、官民一体での取り組みを推進しています。

「インフラDX推進計画」の概要

国土交通省は、インフラ分野におけるDXの方向性を示す「インフラDX推進計画」を策定し、定期的に更新しています。この計画では、インフラDXを通じて目指すべき将来像として、「安全・安心で持続可能な社会の実現」「生産性の飛躍的な向上」「国民生活の質の向上」などを掲げています。

そして、その実現に向けた重点施策として、以下のような項目を挙げています。

  • 3次元データ(BIM/CIMなど)の活用拡大
  • AI、IoT、ロボット、ドローンなどの新技術の導入促進
  • データの連携・利活用による全体最適化
  • 遠隔化・自動化による働き方改革
  • デジタル人材の育成・確保

これらの施策を、公共工事だけでなく民間事業も含めて、社会全体で推進していくための具体的なアクションプランが示されています。

中核をなす「BIM/CIM」の原則適用

国土交通省が進めるインフラDXにおいて、中核的な基盤技術として位置づけられているのがBIM/CIMです。計画・調査・設計段階で作成したインフラ構造物の3次元モデル(BIM/CIMモデル)に、コスト、材料、工程、維持管理履歴といった様々な属性情報を紐づけ、そのデータを施工段階での活用(ICT施工との連携など)、さらには完成後の維持管理段階での活用(点検・診断記録の管理など)まで、ライフサイクル全体で一気通貫で活用することを目指しています。

国土交通省は、2023年度から、全ての公共工事(小規模なものを除く)において、BIM/CIMを原則として適用する方針を打ち出しており、建設業界全体のBIM/CIM導入を強力に推進しています。これにより、プロセス間のデータ連携を飛躍的に向上させ、インフラDX全体の基盤を整備しようとしています。

「デジタルツイン」の実現に向けた取り組み

さらに国土交通省は、インフラDXの将来像として、現実のインフラや都市空間を、センサーデータなどに基づいて仮想空間上にそっくり再現する「デジタルツイン」の構築を目指しています。

このデジタルツインを活用することで、例えば、災害発生時の浸水状況や避難経路をリアルタイムでシミュレーションしたり、新しい交通システムの導入効果を事前に検証したり、都市計画の変更が周辺環境に与える影響を予測したりといった、これまで不可能だった高度な分析や意思決定が可能になります。

「Project PLATEAU(プラトー)」と呼ばれる、全国の3D都市モデルをオープンデータとして整備するプロジェクトなどが、このデジタルツイン実現に向けた具体的な取り組みとして進められています。

インフラDXを支える主要テクノロジー

インフラDXは、単一の技術によって実現されるものではなく、以下に示すような様々なデジタル技術が、それぞれの役割を果たしながら有機的に連携することで、その全体像が形作られます。

BIM/CIM

前述の通り、BIM/CIMはインフラDXの基盤となる重要な技術です。3次元モデルを核として、形状情報だけでなく、材料、コスト、工程、維持管理履歴といったインフラのライフサイクル全体に関わる多様な情報を統合的に管理します。これにより、設計・施工・維持管理の各段階での情報共有と連携を飛躍的に向上させ、プロセス全体の効率化と高度化を実現します。

IoTセンサー・ドローン

IoT技術は、現実世界のインフラの状態をデジタルデータとして収集するための「目」や「神経」の役割を果たします。橋梁やトンネルの構造物に設置されたひずみセンサーや加速度センサーが、ひび割れや変位といった劣化の兆候を常時監視します。河川に設置された水位センサーは、豪雨時の氾濫リスクをリアルタイムで検知します。

また、ドローンは、人間が直接アクセスすることが困難な高所の橋梁下面や、広大なダムの壁面、あるいは災害発生直後の被災地などを、安全かつ効率的に点検・調査することを可能にします。ドローンが撮影した高精細な画像やレーザー計測データは、劣化箇所の特定や3次元モデルの作成に活用されます。

AI(人工知能)

AIは、IoTセンサーやドローンなどによって収集された膨大な画像データやセンサーデータを分析し、人間だけでは見つけ出すことが難しいパターンや異常を検知する「頭脳」の役割を担います。

例えば、以下のようなものが該当します。

・ドローンが撮影した橋梁の画像データをAIが解析し、ひび割れや錆といった劣化箇所を自動で検出・分類します。

・過去の点検データや気象データなどをAIが学習し、将来のインフラの劣化進行度を高精度で予測します。

・道路の交通量データをAIが分析し、渋滞が発生しやすい箇所や時間帯を予測し、信号制御の最適化などに繋げます。

AIの活用により、点検・診断業務の効率化と精度向上が期待されます。

5G・ローカル5G

5G(第5世代移動通信システム)およびローカル5G(特定のエリア限定で構築される5Gネットワーク)は、建設現場や広大なインフラ設備において、高精細な映像データや大量のセンサーデータを、遅延なくリアルタイムに伝送するための通信基盤として重要です。

例えば、建設機械の遠隔操作や、現場作業員が装着したウェアラブルカメラからの高画質映像伝送、多数のIoTセンサーからの同時データ収集などを、安定して行うことが可能になります。これにより、遠隔臨場や自動化技術の導入が加速します。

ロボット技術・自動運転

ロボット技術は、建設現場やインフラ点検における「手足」として、危険な作業や人手不足を補う役割を果たします。

・建設機械の自動運転・自律化:GPSやセンサー、AIを活用し、ブルドーザーや油圧ショベルなどが、設計データに基づいて自動で土砂の掘削や敷きならしを行います(ICT施工)。

・点検ロボット:トンネル内や下水道管内など、人間が立ち入ることが困難な狭隘空間を自律走行し、カメラやセンサーで内部の状況を点検するロボットが開発・導入されています。

・ドローンによる点検・物流:橋梁や送電線といった高所設備の点検だけでなく、山間部への資材輸送などにドローンを活用する試みも始まっています。

これらのロボット技術は、現場の省人化と安全性の向上に大きく貢献します。

インフラDXがもたらすメリット

インフラDXの推進は、インフラを管理する行政機関や関連事業者だけでなく、現場で働く人々、そして最終的にはインフラを利用する国民生活全体に対して、多岐にわたる具体的なメリットをもたらします。

【行政・事業者】維持管理の効率化と生産性向上

インフラを管理する行政機関や事業者にとって、最大のメリットは維持管理業務の大幅な効率化と生産性の向上です。センサーやドローンによる点検の自動化・省人化は、従来の目視点検に比べて時間とコストを大幅に削減します。

さらに、収集したデータをAIで分析することで、インフラの劣化状況を正確に予測し、問題が発生する前に対策を講じる「予防保全」が可能になります。これにより、突発的な修繕工事を減らし、計画的な予算執行とインフラの長寿命化を実現できます。結果として、インフラ全体のライフサイクルコストの削減に繋がります。

【現場】安全性の向上と働き方改革

インフラの建設や維持管理の現場で働く人々にとっても、DXは大きなメリットをもたらします。高所や狭隘空間、災害現場といった危険な場所での作業を、ロボットやドローンが代替することで、現場の安全性が飛躍的に向上します。

また、ウェアラブルカメラなどを活用した遠隔臨場は、現場監督が事務所にいながらにして複数の現場の状況を確認・指示することを可能にし、移動時間の削減と業務の効率化を実現します。これにより、長時間労働の是正や、テレワークといった柔軟な働き方の導入が進み、建設・インフラ業界の働き方改革に貢献します。

【国民】生活の利便性と安全・安心の向上

最終的にインフラを利用する国民にとっても、DXは様々な恩恵をもたらします。インフラの安定稼働は、停電や断水といった生活への影響を最小限に抑え、日々の安定した暮らしを守ります。

災害発生時には、被害状況に関する情報が迅速かつ正確に提供されるようになり、適切な避難行動や、早期の生活再建に繋がります。また、交通分野においては、AIによる渋滞予測や、MaaS(Mobility as a Service)との連携による最適な移動手段の提供などにより、より快適で効率的な移動サービスの実現が期待されます。

インフラDX推進における課題と障壁

壮大な変革をもたらす可能性を持つインフラDXですが、その推進と普及には、特に日本の社会構造や業界特性とも関連する、いくつかの乗り越えるべきハードルが存在します。

高額な初期投資と中小企業の負担

BIM/CIMに対応した高機能なソフトウェアの導入やライセンス費用、ICT建設機械やドローン、各種センサーといった新しい技術や設備の導入には、多くの場合、高額な初期投資が必要となります。

特に、建設業界の大部分を占める中小規模の建設事業者や、財政基盤の弱い地方自治体にとっては、この投資負担がDX導入の大きなハードルとなる場合があります。費用対効果が見えにくい中で、投資判断に踏み切れないケースも少なくありません。

データ連携のための標準化とセキュリティ

インフラの計画から建設、維持管理には、発注者である行政機関、設計コンサルタント、ゼネコン、専門工事業者、維持管理業者など、非常に多くの多様なプレイヤーが関わります。インフラDXの効果を最大化するためには、これらの異なる組織やシステム間でデータをスムーズに連携させ、共有・活用できる仕組みが不可欠です。

しかし現状では、データのフォーマットやシステム仕様が統一されておらず、相互の連携が困難な場合があります。BIM/CIMの原則適用など、国が主導してデータ標準化を進めていますが、その完全な普及と定着にはまだ時間がかかります。

また、道路、電力、水道といった社会インフラは、サイバー攻撃の標的となった場合の影響が極めて大きいため、データ連携を進める上での高度なセキュリティ対策の確保も絶対条件となります。

DXを推進できるデジタル人材の不足

インフラDXを効果的に推進するためには、土木や建築といった従来のインフラに関する専門知識と、データサイエンスやAI、IoT、BIM/CIMといったデジタル技術に関する知識の両方を併せ持つ、分野横断的な人材が必要です。

しかし、そのような高度なスキルセットを持つ人材は、社会全体で圧倒的に不足しており、特に地方の自治体や中小企業にとっては、その確保や育成が非常に大きな課題となっています。従来の業務に精通したベテラン技術者へのデジタルスキルの再教育(リスキリング)や、外部の専門人材との連携などが求められます。

インフラDXの先進的な取り組み事例

課題はあるものの、全国の自治体やインフラ関連企業では、それぞれの地域や事業が抱える課題を解決するために、DXを積極的に推進し、具体的な成果を上げ始めています。

【道路・建設分野の事例】株式会社小松製作所

建設機械大手のコマツは、単にICT建機を販売するだけでなく、建設現場のあらゆる情報(ドローンによる測量データ、BIM/CIM設計データ、ICT建機の稼働状況、現場の進捗写真など)をクラウド上で繋ぎ、施工プロセス全体を最適化するソリューション「スマートコンストラクション」を提供しています。

これにより、施工の計画段階から完了まで、生産性の向上、工期の短縮、安全性の向上をトータルで支援し、建設現場全体のDXをリードしています。

【交通分野の事例】東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)

JR東日本は、鉄道の安全・安定輸送をさらに高いレベルで実現するため、DXを積極的に活用しています。

特に、線路や架線、車両といった鉄道設備に多数のセンサーを設置し、それらの状態(温度、振動、摩耗度など)を常時監視・分析することで、故障が発生する前にその予兆を検知し、最適なタイミングでメンテナンスを行うCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)の導入を進めています。

これにより、突発的な設備故障による輸送障害のリスクを低減し、メンテナンス業務の効率化も図っています。

【水道分野の事例】横浜市水道局

横浜市水道局は、老朽化が進む水道管路の維持管理において、DXを活用した先進的な取り組みを行っています。過去の漏水履歴データや、管路の材質・経過年数といった情報、さらには道路の交通量データなどをAIで分析し、将来的に漏水が発生するリスクが高い箇所を高い精度で予測するシステムを導入しました。

この予測結果に基づき、管路の更新計画を策定することで、従来の対症療法的な修繕から、計画的で効率的な予防保全へと転換し、漏水事故の削減と更新コストの最適化を実現しています。

まとめ

本記事では、インフラDXについて、その基本的な意味から必要性、主要技術、導入メリット、そして推進における課題や成功事例まで、網羅的に解説しました。

インフラDXとは、デジタル技術とデータを活用して、社会インフラの計画、建設、維持管理、利用に関わる全てのプロセスを変革し、その安全性、生産性、利便性を飛躍的に向上させる取り組みです。老朽化が進むインフラの維持管理、深刻化する担い手不足、激甚化する自然災害への対応といった、日本社会が抱える喫緊の課題を解決する上で、その推進は不可欠となっています。

BIM/CIMを基盤とし、IoT、AI、ドローン、ロボットといった技術が連携することで、インフラ管理の効率化、現場の安全性向上、そして国民生活の質の向上といった多大なメリットが期待されます。導入コストや人材不足といった課題は存在するものの、国土交通省の強力なリーダーシップのもと、官民一体となった取り組みは着実に進展しています。インフラDXは、日本の未来社会を支えるための重要な挑戦と言えるでしょう。

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