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カスタマーサクセスとは?サポートとの違いやKPI、LTVを最大化する3つの手法

カスタマーサクセスの定義やカスタマーサポートとの決定的な違い、SaaSビジネスにおいて重要視される理由を専門家が徹底解説します。LTV最大化に向けたKPIの設定方法、チャーンレートの種類、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチという3つの支援モデル、オンボーディングの成功法則まで網羅。現場で役立つ具体的な施策や必要スキルも紹介します。

目次

  1. カスタマーサクセスとは?意味とカスタマーサポートとの違い
  2. カスタマーサクセスが注目される背景とサブスクリプション
  3. カスタマーサクセスに取り組む3つの目的とメリット
  4. カスタマーサクセスの重要な指標となるKPIとKGI
  5. カスタマーサクセスのタッチモデルと具体的な施策
  6. カスタマーサクセスの成功を左右するオンボーディング
  7. カスタマーサクセスを実行する組織体制とツール
  8. カスタマーサクセスの仕事内容と求められるスキル
  9. まとめ

サブスクリプション型のビジネスモデルが普及する中、企業の成長を左右する概念として「カスタマーサクセス」が大きな注目を集めています。従来の売り切り型ビジネスとは異なり、契約後の顧客体験が収益に直結する現代において、顧客を成功へと導く能動的な関わりはもはや必須の戦略となりました。

しかし、いざカスタマーサクセスを導入しようとしても「カスタマーサポートと何が違うのか」「どのような指標を追えばよいのか」といった疑問を抱く方も少なくありません。本記事では、カスタマーサクセスの基礎知識から、具体的なKPIの設定方法、顧客セグメントに応じたタッチモデルの使い分けまでを詳しく解説します。

カスタマーサクセスとは?意味とカスタマーサポートとの違い

カスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスを利用することで得たい成果を、企業側から積極的に働きかけて実現させる活動や職種を指します。顧客が目的を達成し、成功体験を積むことで、長期的な契約継続や収益の最大化を目指すという、現代のビジネスにおいて非常に重視されている概念です。

このセクションでは、カスタマーサクセスの本質を理解するために必要な3つの観点を整理します。

能動的な支援による顧客の成功体験の創出

従来のカスタマーサポートとの比較と役割の違い

SaaSビジネスにおける重要性と位置付け

能動的な支援による顧客の成功体験の創出

カスタマーサクセスの最大の特徴は、企業側から顧客に対して働きかける「能動性」にあります。顧客がサービスの使い方に迷ったり、課題に直面したりする前に、利用データや状況を分析して先回りした提案を行うことが基本姿勢となります。

単に操作方法を教えるのではなく、顧客がその製品を通じてどのようなビジネス目標を達成したいのかを深く理解しなければなりません。顧客の目標(サクセス)を自社の目標として共有し、伴走しながら課題解決を支援することで、顧客は製品の真の価値を実感できるようになります。

こうしたプロアクティブな関わりを継続することによって、顧客は「このサービスを使い続けたい」と自然に感じるようになり、結果として長期的な信頼関係が構築されます。

従来のカスタマーサポートとの比較と役割の違い

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの最も大きな違いは、対応の起点と目指すべきゴールにあります。カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせを受けてから動き出す受動的な活動であり、発生した不満や問題を解消してマイナスをゼロに戻すことが主な役割です。

一方でカスタマーサクセスは、問題が起きる前から接触を開始し、顧客の状況をプラスへ引き上げることを目指します。追うべき指標も大きく異なり、サポートが対応件数や平均処理時間を重視するのに対し、サクセスは解約率や売上金額といった事業成長に直結する数値を追いかけます。

両者は対立するものではなく、役割分担をして顧客を支える関係にあります。トラブルが起きた際の迅速なサポートは信頼の維持に不可欠であり、その土台の上にサクセスによる付加価値の向上が積み重なることで、盤石な顧客体験が完成します。

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの重要性と位置付け

SaaSビジネスにおいてカスタマーサクセスがこれほどまでに重要視される理由は、収益構造が継続利用を前提としているためです。従来の売り切り型のソフトウェア販売とは異なり、契約を結んだ時点ではまだ利益が出ておらず、長期間使い続けてもらうことで初めて初期コストを回収し、利益を創出できる仕組みになっています。

そのため、カスタマーサクセスは単なる顧客対応部門ではなく、営業部門や開発部門と並ぶ収益の柱として位置付けられます。契約後の顧客体験(CX)のすべてをマネジメントし、顧客がサービスを使いこなせないまま離脱してしまうリスクを最小限に抑えることが求められます。

マーケティングやセールスが獲得した顧客を、いかに維持し、成長させるかというフェーズを担うため、事業成長を加速させるための原動力としての役割を期待されています。

カスタマーサクセスが注目される背景とサブスクリプション

カスタマーサクセスという考え方が急速に普及した背景には、テクノロジーの進化に伴うビジネスモデルの構造的な変化があります。特にソフトウェア業界を中心に広がったサブスクリプションモデルの台頭が、企業と顧客の力関係を大きく変えました。

なぜ今、すべての企業がこの概念を無視できなくなっているのか、その要因を3つのポイントで解説します。

所有から利用へと変化する消費トレンド

サブスクリプションモデルにおける収益構造の変化

LTV最大化が経営課題となる理由

所有から利用へと変化する消費トレンド

現代の消費者は、製品を高い金額で購入して自分のものにする「所有」よりも、必要な時に必要な分だけサービスを利用する「利用」に価値を見出すようになっています。これは個人向けの動画配信サービスから、企業が利用する基幹システムに至るまで、あらゆる分野で見られる世界的な傾向です。

この変化により、顧客にとっての乗り換え障壁は大幅に低下しました。もし提供されているサービスに満足できなければ、顧客は翌月には解約し、より優れた競合他社のサービスへ簡単に移動できてしまいます。

企業側は一度売って終わりという姿勢では生き残れず、選ばれ続けるための付加価値を常に提供し続けなければならない状況に置かれています。

サブスクリプションモデルにおける収益構造の変化

サブスクリプションモデルでは、サービス提供開始時に多額の利益を得ることは困難です。インフラの構築費や人件費、広告宣伝費といった新規獲得コスト(CAC)が先行して発生するため、顧客が数ヶ月から数年にわたって利用を継続して初めて、累積利益がプラスに転じます。

この収益構造において、早期の解約は企業にとって致命的な損失を意味します。どれだけ新規顧客を大量に獲得しても、それと同等のスピードで既存顧客が流出してしまえば、バケツに穴が空いたような状態となり、事業は決して成長しません。

つまり、継続率を向上させることが、サブスクリプションビジネスにおける最優先の生存戦略となったのです。

LTV最大化が経営課題となる理由

新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客に継続してもらうためのコストの5倍かかると言われており、これを「1:5の法則」と呼びます。市場が成熟し、広告単価が高騰する中で、既存顧客一人ひとりから得られる収益の総和であるLTV(顧客生涯価値)をいかに高めるかが、経営の最重要課題となっています。

LTVを高めるためには、契約期間を延ばすだけでなく、利用範囲を広げてもらったり、より上位のプランへアップグレードしてもらったりする働きかけが必要です。これを組織的に実行するのがカスタマーサクセスの役割であり、安定したキャッシュフローを生み出すための鍵となります。

既存顧客の成功を支援し、ファンになってもらうことこそが、最も投資対効果の高い成長戦略であるという認識が広まっています。

カスタマーサクセスに取り組む3つの目的とメリット

カスタマーサクセスを組織に導入することは、単に顧客満足度を高めるだけでなく、企業の財務状況やプロダクトの競争力に直接的なプラスの影響を与えます。その目的は多岐にわたりますが、大きく分けると「守り」「攻め」「改善」の3つの側面があります。

カスタマーサクセスがもたらす具体的なメリットを整理すると、以下の3点に集約されます。

解約率の低減と収益安定化

アップセルとクロスセルによる顧客単価の向上

プロダクトへのフィードバックと品質改善

解約率の低減と収益安定化

カスタマーサクセスの直接的な目的は、チャーンレート(解約率)を最小限に抑え込むことです。顧客の利用状況を数値で可視化し、ログイン頻度が落ちている顧客や、特定の機能を使いこなせていない顧客に対して適切なタイミングでフォローを行います。

このように先回りの対策を講じることで、顧客が抱く小さな不満が解約という大きな意思決定に発展するのを未然に防ぐことができます。解約率が安定して低い水準に保たれることは、将来の収益予測を容易にし、事業の安定性を飛躍的に高めます。

理想的な状態は、既存顧客の増額分が解約による損失を上回るネガティブチャーンの状態を作り出すことであり、これが実現できれば事業は加速度的に成長します。

アップセルとクロスセルによる顧客単価の向上

カスタマーサクセスは、既存顧客からの売上を拡大させる「攻め」の役割も担います。日々の支援を通じて顧客の業務内容や課題を深く理解しているため、より高度な機能を持つ上位プラン(アップセル)や、関連する別サービス(クロスセル)の提案を、最適なタイミングで行うことが可能です。

強引な売り込みではなく、顧客の課題解決に必要な手段として提案されるため、営業担当者による新規提案よりも成約率が高くなる傾向があります。顧客が製品の価値を十分に享受し、信頼関係ができているからこそ、スムーズな単価アップが実現します。

既存顧客の成功の度合いに合わせて売上を伸ばしていくこのプロセスは、非常に健全で効率的なビジネスの拡張方法と言えます。

プロダクトへのフィードバックと品質改善

現場で顧客と密接に関わるカスタマーサクセス担当者は、顧客の要望や不満、活用シーンにおけるリアルな声を最も多く保有しています。これらの貴重な情報を開発部門やプロダクトマネージャーに共有することで、市場のニーズに合致した機能改善が可能になります。

顧客の声が反映されたアップデートが行われれば、プロダクトの価値はさらに高まり、結果として解約防止や新規獲得にも貢献します。このサイクルを回すことで、独りよがりな開発を防ぎ、真に求められる製品へと進化させることができます。

カスタマーサクセスは、顧客と企業の間に立つ情報のハブとしての役割を果たすことで、中長期的なプロダクト競争力を支えています。

カスタマーサクセスの重要な指標となるKPIとKGI

カスタマーサクセスの活動は感覚的なものではなく、常にデータに基づいて評価されるべきものです。定性的な「顧客との仲の良さ」に頼るのではなく、事業への貢献度を客観的に示すための指標を適切に設定することが、組織としての成果を最大化する第一歩となります。

解約率の種類と計算式

カスタマーサクセスが最も注視すべき指標がチャーンレート(解約率)です。これには大きく分けて、顧客数ベースで算出する「カスタマーチャーン」と、金額ベースで算出する「レベニューチャーン」の2種類が存在します。

カスタマーチャーンは「解約した顧客数 ÷ 全顧客数」で算出され、サービスの満足度を測る指標となります。一方、レベニューチャーンは「解約による損失MRR(月次経常収益) ÷ 全MRR」で算出され、事業の財務状況へのインパクトを測るのに適しています。

SaaSビジネスでは、単に顧客数を維持するだけでなく、収益ベースでの解約率をいかに下げるかが、投資家や経営層からの評価を左右する極めて重要なポイントとなります。

LTVの算出と最大化

LTV(顧客生涯価値)は、1社の顧客が自社と契約している期間を通じて、トータルでどれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。一般的な算出式は「平均顧客単価 × 収益率 × 継続期間」となりますが、カスタマーサクセスにおいては継続期間をいかに延ばし、単価をいかに上げるかが活動の鍵となります。

LTVが高まるということは、その顧客が長期間にわたってサービスに価値を感じ続け、対価を払い続けている証拠です。これはカスタマーサクセス活動が成功していることを示す究極のKGI(重要目標達成指標)と言えます。

LTVを最大化するためには、単なる解約防止に留まらず、顧客の成長に合わせた継続的な価値提供のサイクルを構築することが求められます。

NPSによる推奨度計測

NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客のロイヤリティを測定するための代表的な指標です。「この製品を友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対し、0から10の11段階で回答してもらい、その結果をもとに顧客を分類します。

9点から10点をつけた人を「推奨者」、0点から6点をつけた人を「批判者」とし、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSとなります。これは現在の収益にはまだ現れていない、顧客の将来的な継続意向や紹介による波及効果を可視化するのに役立ちます。

顧客の感情的なエンゲージメントを数値化することで、解約の予兆を早期に察知したり、サービスのファンを育成するための施策に活かしたりすることができます。

オンボーディング完了率とヘルススコアの管理

ヘルススコアとは、顧客が解約しそうか、あるいは継続してくれそうかという「健康状態」を複数のデータの組み合わせで数値化したものです。ログイン頻度、主要機能の利用率、問い合わせ回数、支払い遅延の有無などを組み合わせて算出します。

また、導入初期の段階では「オンボーディング完了率」を重要な先行指標として設定します。設定が予定通り完了しているか、最初の成功体験を得られたかを確認することで、その後の解約リスクを大幅に軽減できます。

これらの数値をリアルタイムでモニタリングし、スコアが低下した顧客に対して自動的にアラートを出す仕組みを整えることで、効率的な先回り対応が可能になります。

カスタマーサクセスのタッチモデルと具体的な施策

すべての顧客に対して、同じように時間と労力をかけて手厚い支援を行うことは、リソースの限られた企業にとって現実的ではありません。顧客のLTVやポテンシャルに応じて支援の濃度や手法を変える「タッチモデル」という考え方が、効率的なカスタマーサクセス運営には不可欠です。

一般的には、以下の4つの方法に分けて戦略を策定します。

大口顧客を手厚く支援するハイタッチ

中間層へ効率的にアプローチするロータッチ

デジタル技術で多数を支援するテックタッチ

コミュニティ活用によるユーザー同士の支援

大口顧客を手厚く支援するハイタッチ

ハイタッチは、自社にとって最も重要度の高い、高単価な顧客層を対象とした支援モデルです。専任のカスタマーサクセス担当者が付き、一社一社のビジネス課題に深く踏み込んだオーダーメイドの伴走支援を行います。

具体的な施策としては、個別の定例ミーティングの実施、経営課題に対するコンサルティング、顧客の社内向け勉強会の開催などが挙げられます。手間と時間はかかりますが、高いLTVを維持し、強力なパートナーシップを築くために必要な投資です。

この層においては、単なる操作説明を超えた経営的な視点での提案が求められ、顧客のビジネスを共に成長させていく姿勢が不可欠となります。

中間層へ効率的にアプローチするロータッチ

ロータッチは、ハイタッチほどの手厚い個別対応は行わないものの、一定の人的介入を交えながら集団に対して効率的に支援を行うモデルです。中規模のLTVを持つ顧客層が主な対象となります。

施策としては、特定のテーマに絞ったウェビナーの開催や、複数の顧客を対象としたワークショップ、共通の課題に対する事例共有会などが中心です。一対多の形式をとることで、担当者一人あたりのカバー範囲を広げつつ、顧客の疑問を解消していきます。

自動化ツールを活用しながらも、要所では人が介在して満足度を維持する工夫が求められます。

デジタル技術で多数を支援するテックタッチ

テックタッチは、顧客数が非常に多く、一社あたりのLTVが相対的に低い層を、テクノロジーの力だけで支援するモデルです。人の手を介さずに、顧客が自力で問題を解決し、サービスを使いこなせる環境を構築することを目指します。

主な施策には、ステップメールの自動配信、アプリ内チュートリアルの表示、充実したFAQサイトの整備、チャットボットによる自動応答などがあります。これらのデジタルツールを駆使し、顧客の行動データに基づいた適切な情報を最適なタイミングで提供します。

テックタッチの質を高めることは、上位モデルの工数削減にもつながるため、全顧客層の満足度を底上げする土台として非常に重要な役割を担います。

コミュニティ活用によるユーザー同士の支援

コミュニティタッチは、ユーザー同士が交流し、教え合う場を提供することでサクセスを実現する手法です。企業がすべての問いに答えるのではなく、熟練したユーザーが初心者の質問に答えたり、独自の活用ノウハウを公開したりする自律的なエコシステムを構築します。

施策としては、オンライン掲示板の運営やユーザー交流イベントの開催などが一般的です。ユーザー同士のつながりが生まれることでサービスへの愛着が深まり、単なる「ツール」から「コミュニティへの参加チケット」へと価値が変換されます。

企業にとってはサポートコストの削減になるだけでなく、熱狂的なファンの育成にも直結するため、近年特に注目を集めているモデルです。

カスタマーサクセスの成功を左右するオンボーディング

カスタマーサクセス活動において、最も重要であり、かつ解約の成否を分けるのが「オンボーディング」フェーズです。これは契約直後の顧客が製品の基本的な使い方をマスターし、サービスが提供する価値を初めて実感するまでの導入支援期間を指します。

オンボーディングを成功に導くためには、以下の3つのポイントを意識する必要があります。

サービス導入直後の定着支援とゴール設定

早期の成功体験の重要性

オンボーディング完了の定義と期間の目安

サービス導入直後の定着支援とゴール設定

契約直後の顧客は、期待と不安が入り混じった状態にあります。ここでまず行うべきは、顧客が何をもって成功とするのかというゴールを明確に合意することです。数値目標や、いつまでにどの状態になっていたいかを具体的に言語化し、共通認識を持ちます。

この段階でKICKOFFミーティングを開催し、顧客側の担当者や決裁者と目線を合わせるプロセスが欠かせません。ゴールが曖昧なまま機能の説明だけを進めても、顧客は製品の価値を感じることができず、活用が進まない原因となります。

顧客のビジネス課題に寄り添ったロードマップを提示し、導入の第一歩を確実に踏み出してもらうことが、その後の長期継続に向けた最大の布石となります。

早期の成功体験の重要性

オンボーディング期間中に、できるだけ早く小さな成功体験(クイックウィン)を感じてもらうことが極めて重要です。複雑な機能をすべて使いこなす必要はありません。「たった5分で業務が楽になった」「欲しかったデータがすぐに手に入った」といった実感が、継続へのモチベーションを高めます。

最初の成功体験を得るまでの時間が長ければ長いほど、顧客の熱量は低下し、製品は放置されるリスクが高まります。そのため、最短ルートで価値に到達できるよう、ガイドを徹底する必要があります。

「使い始めて良かった」という感動を初期段階で提供できるかどうかが、その後の活用定着やアップセルの可能性を大きく左右します。

オンボーディング完了の定義と期間の目安

「いつまでも手厚く教え続ける」ことは、組織のスケールを妨げる原因になります。そのため、自社におけるオンボーディング完了の定義を明確にしておくことが重要です。例えば、「基本設定がすべて終わっている」「主要な機能を3回以上利用した」といった具体的な基準を設けます。

一般的なB2B SaaSの場合、この期間は1ヶ月から3ヶ月程度を目安に設定されることが多いです。この期間内に顧客が自立して使いこなせる状態、つまり「アダプション(定着)」フェーズへ移行させることを目指します。

完了基準を明確にすることで、担当者は次の顧客へリソースを割けるようになり、組織全体として健全な顧客循環を生み出すことができます。

カスタマーサクセスを実行する組織体制とツール

カスタマーサクセスは、個人のスキルや努力に依存するのではなく、組織的な仕組みと適切なテクノロジーの活用によって初めて成果が安定します。顧客数が拡大するにつれて、データに基づいた効率的な管理体制の構築が不可欠となります。

組織を機能させるためのポイントとして、以下の3つの観点から体制を整えていきましょう。

カスタマーサクセス専用ツールの活用

CRMやSFAとのデータ連携と顧客情報の可視化

他部門と連携した全社的な支援体制の構築

カスタマーサクセス専用ツールの活用

顧客の利用状況を把握し、適切なアクションを導き出すためには、カスタマーサクセス専用ツール(CSプラットフォーム)の導入が非常に有効です。これらのツールは、複数のデータソースから顧客情報を統合し、ヘルススコアを自動的に算出する機能を備えています。

例えば、ログインが一定期間途絶えた際に担当者へ通知を飛ばしたり、契約更新の時期が近い顧客のリストを自動作成したりすることが可能です。Excelやスプレッドシートでの管理は、顧客数が増えるとすぐに限界を迎えます。

データに基づいた意思決定を迅速に行うためには、システムによる自動化と可視化が欠かせない要素となります。

CRMやSFAとのデータ連携と顧客情報の可視化

カスタマーサクセスは、営業部門が獲得してきた顧客を引き継ぐ形になります。この際、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)とのデータ連携が不十分だと、契約前のやり取りや顧客の期待値、抱えている課題がサクセス担当者に伝わらず、顧客に何度も同じ説明をさせることになってしまいます。

営業段階での情報を正確に引き継ぎ、シームレスな体験を提供することが、顧客の信頼を勝ち取るための大前提です。すべての顧客情報が一箇所に集約され、誰でも最新の状況を確認できる環境を整えなければなりません。

「情報の分断」を防ぐことが、組織としての対応スピードを高め、質の高い顧客支援を実現するための鍵となります。

他部門と連携した全社的な支援体制の構築

カスタマーサクセスは一つの部門だけで完結するものではありません。顧客の成功を真に実現するためには、プロダクトの改善を担う開発部門や、適切な期待値を形成して契約を勝ち取る営業・マーケティング部門との密な連携が不可欠です。

例えば、顧客からの要望を開発部門にフィードバックして新機能に反映させたり、解約理由を分析して営業ターゲットの精度を高めたりといった活動が、全社的な成果につながります。

「顧客の成功は全社の責任である」という全社的な文化の醸成こそが、カスタマーサクセス組織を真に機能させるための最も強力な土台となります。

カスタマーサクセスの仕事内容と求められるスキル

カスタマーサクセス担当者(CSM)の業務は、単なるカスタマーサポートや営業とは異なる、多面的なビジネススキルが求められる職種です。顧客の成功を自らの喜びとしつつも、数値を冷静に分析してプロジェクトを推進するバランス感覚が重要となります。

具体的にどのようなスキルセットが必要なのか、主な実務内容と合わせて整理します。

顧客の課題解決に向けたコンサルティング業務

データ分析力とコミュニケーション能力の必要性

顧客の課題解決に向けたコンサルティング業務

カスタマーサクセスの実務は、製品の操作説明に留まらず、顧客のビジネスフローそのものを改善するコンサルティングに近い動きとなります。顧客の現状(As-Is)と理想の状態(To-Be)のギャップを埋めるために、どのように製品を活用すべきかを戦略的に提案します。

そのためには、自社の製品知識だけでなく、顧客の属する業界の商習慣やビジネスモデル、市場トレンドに対する深い理解が必要です。顧客と同じ目線、あるいはそれ以上の視座を持って対話することで、初めて信頼されるアドバイザーとしての地位を確立できます。

顧客を動かし、組織に変化をもたらす提案力は、カスタマーサクセスにおける最も付加価値の高いスキルと言えるでしょう。

データ分析力とコミュニケーション能力の必要性

カスタマーサクセスには、定性と定量の両面からアプローチする力が求められます。まずは利用データやヘルススコアを読み解き、どこに課題があるのかを論理的に特定するデータ分析力が必要です。数字の裏側にある顧客の心理や行動を推測し、精度の高い仮説を立てる力が欠かせません。

その一方で、分析結果をもとに顧客に直接働きかけ、実行へと促す高いコミュニケーション能力も同様に重要です。相手の立場を尊重しつつ、時には耳の痛いアドバイスも行いながら、プロジェクトを前に進めていく力が問われます。

「論理」で状況を把握し、「情熱」で人を動かす。この二つの資質を兼ね備えていることが、一流のカスタマーサクセス担当者の条件です。

まとめ

カスタマーサクセスは、単なる顧客対応の延長線上にあるものではなく、サブスクリプション時代を勝ち抜くための根幹となる経営戦略です。能動的な支援を通じて顧客の成功を創出することは、解約率の低下やLTVの最大化をもたらし、結果として企業の持続的な成長を強力に支えます。

本記事で解説したKPIの設定やタッチモデルの運用、そして最重要フェーズであるオンボーディングの最適化は、いずれもデータに基づいた科学的なアプローチが求められます。大切なのは、特定の部門だけが奮闘するのではなく、全社一丸となって顧客の成功を追求する文化を築くことです。

まずは自社の顧客状況を可視化することから始め、一人ひとりの顧客が「このサービスを選んで良かった」と心から思える体験をデザインしていきましょう。その積み重ねが、揺るぎない事業基盤の構築へとつながるはずです。

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